確かに否定できない。何故かと説明はできないのですが、ピアノ・トリオは聴きやすい。BGM程度に聴く時でも、本気で集中して聴く時でも、良い物は良いという感じ。
それと、ジャズの世界でも「一発屋」はいるもので、他はほとんど評判にならないのに、やたらと人気のある一枚を持っている人がいる。
そんなピアノ・トリオの名盤の一枚がウォルター・ビショップJRのこの1961年のアルバム。
後にコルトレーンの黄金時代に活躍するベースのジミー・ギャリソンも、この時はまだほとんど知られていません。ドラムはG.T.ホーガン・・・って誰よ、という布陣。
ビショップはチャーリー・パーカーとも共演した、それなりに実績を持っているピアニストなんですが、これといったアルバムは以前にも以後にもほとんど見かけません。
ビショップのビアノは、シングルトーンで転がすわけでもなく、ブロックコードでバリバリに弾くわけでもない。スピード感はあるのに、どちらかと言うとクラシックに近いような、重厚な流れるようなフレーズが多く、全曲スタンダードで選曲はとっつき易い。
全体にわたって、ライブのような熱気をはらんだ演奏が続き、多くのミュージシャンが取り上げる有名曲でも、緊張感のある名演と言える溌剌とした演奏が聴けます。
これに気をよくして、他のビショップのアルバムに手を出すと、うーん、まぁ取り立ててどっちでもいいかなという感じで期待した分残念な感じになります。
結局、このアルバムに戻って安心するわけで、この一枚だけで永遠に忘れられないピアニストの一人に数えられるのでした。