ホレス・シルバーは、50年代にはアート・ブレイキーらとの共演で名を馳せました。バド・パウエルの影響を強く感じる、伴奏でもソロを取る時でも比較的はっきりした音を出して、乗りの良い音楽という印象です。
そういう意味で、いわゆるファンキーなジャズの代表選手という感じですが、80年代にスタイリッシュな音楽を目指して変わった新生Blue Noteでは活躍の場が無くなり、以後シルバーは目立たなくなってしまいました。
このアルバムは、「父に捧ぐ歌」というくらいで、ジャケットも自分の父親の写真を掲げています。そのせいで、シルバーのビジュアルとして、それなりの年寄りという印象が定着してしまいました。
実際には、30代なかばの演奏で、黒人にしては髪の毛もストレート気味でシティ派美青年ですので、他のアルバムとのギャップが今でも感じられます。
60年代なかばといえば、ジャズと言えばハード・パップからコルトレーンをはじめとしたフリーな演奏に変化していた時代で、このアルバムは当時としては古臭いスタイルだったかもしれませんが、全体のアンサンブルとソロのバランスが絶妙で、旧Blue Noteの完成形を示した一枚という意味で忘れられません。