2022年3月8日火曜日

パスタの話 5 郷土の定番


イタリアは南北に長い、いわゆる「長靴」のような形をした国土を持ちます。北部は山並に続き、スイスやフランスと接しますが、大部分は海に囲まれた国。地中海の温暖な気候が、様々な美味しい料理を生み出しました。

イタリアでは、それぞれの地域で独特の味があり、イタリア料理というのは郷土料理の集大成と言われています。それぞれの家庭で、作り慣らされた「おばあちゃんの味」みたいなもので、パスタについても600種類以上あるというのもそういうところからきている。

パスタの名称も、素材の名前を並べただけというのもありますし、町の名前が使われることある。

北から行くと、まずはジェノバ。バジルの葉をすりつぶしてソースにした、そのまんま、ジェノベーゼが有名。断面が楕円形のリングイネを使うのが本場の作り方。

ガラス工芸で有名な水の都、ヴェネチアではペスカトーレ。豊富な魚介をふんだん使った、濃厚な味わいを楽しめます。特にイカ墨を使ったネロは独特の風味で魅了します。

ボローニャから中部という位置づけ。ボローニャと言えばボロネーゼ。ミートソースの原型です。なんとかネーゼというのはなんとか風という意味で、本来のボロネーゼは平らなパスタを使うらしい。

中部になると、南北が合わさった食文化。まずはアマトリーチェ。ローマの北100kmの山のふもと。アマトリーチェが地震で被害を受けた時は、ここで発祥したアマトリチャーナを食べて支援する運動がおこったりしました。本来はグアンチャーレと呼ばれる豚ほお肉の塩漬けと、羊のチーズであるペコリーナを使い、トマトは使わないこともあったりするらしい。

イタリアの首都、ローマで定番と言えば、カチェエペペとカルボナーラ。これらでメインに使われるのが濃厚なチーズと刺激的な胡椒。

南の有名所というと、ナポリとシチリア島とバレルモ。素材を生かした、比較的さっぱりとしたものが多く、香辛料としては唐辛子がたくさん使われます。基本的なソースとして多用される、トマトとバジルだけのポモドーロ、ニンニクと唐辛子だけのペペロンチーノなどが人気。

これらが混ざった発展形がボンゴレ・ビアンコとトマトが加わるボンゴレ・ロッソ、あるいはオリーブ、アンチョビ、ケイパーのプッタネスカになります。他にも日本では高級食材になるウニやカラスミの味を楽しむパスタなどもあります。

イタリアの食文化を楽しむためには、特色のあるそれぞれの地域の味を網羅することが大事。その中で、好みの味を見つけてみるのが楽しいようです。日本もイタリア料理の中では一つの地域と考えれば、特色ある素材を生かしたものは和製の独自のパスタ料理としてOKということですね。