2022年3月31日木曜日

ピッツァの話 1 食べる場所


イタリア料理と言えば、スパゲッティと双璧をなすのがピッツァ・・・なのに、何故かピッツァのことはあまりイタリア料理人の方々のネットへの発信で語られることがほとんど無い印象です。

これは、そもそもイタリアの飲食店の「格付け」みたいな物を知らないと理解できません。日本でも、正装して出かける店から、近所の定食屋さんまでいろいろな店があって、出されるメニューは違うものです。

イタリアの飲食店は高級志向のリストランテから、順にトラットリア、オステリア、そしてタヴェルナという具合に大衆志向になっていきます。

リストランテ ristorante はレストラン。基本的には形式のあるコースを中心に、時にはちゃんとした服を着ていないと入れません。日本の有名のシェフがいる店はたいていリストランテですが、日本の方が多少カジュアルでも許される雰囲気です。伝統的に、コースにはピッツァは含まれない。

トラットリア trattoria は、格式ばった雰囲気はありませんが、フル・コースが食べられる場所。オステリア osteria は、日本だと居酒屋さんみたいな感じで、大人数でわいわいがやがやできる店。タヴェルナ taverna は大衆食堂という感じで、料理が出されてもタベルナとはこれいかに、というのは昔からあるギャグ。

他にもおつまみ程度の食事を出すバーカロbacaro とか、立ち飲みスタイルのバール bar などがありますが、メニューを特化しているのが、パスタ専門店のスパゲッテリア、揚げ物専門がロスティッチェリアなどですが、特にピッツァを専門にしているのがピッツェリアです。

要するに、通常リストランテにはピッツァは無いということ。とは言え、日本の場合、経営的な意味合いでイタリア料理店なのにピッツァは無いとも言えないみたいなところがあるのが、シェフたちの悩みどころなのかもしれません。

そもそもピッツァはイタリア、ナポリが発祥ですが、アメリカ人が四角い箱の出前を取りまくってビールやコーラと一緒にガツガツ食べているイメージがあります。アメリカでピッツァが広まったのは第二次世界大戦後のことで、瞬く間に定着し「ピザ」と呼ぶようになりました。

一般にイタリアのピッツァは、生地は薄くて、いわゆるクリスピータイプです。アメリカのピザは生地は厚めで甘いことが多いらしい。日本にも進出している宅配ピザはほとんどアメリカ資本です。日本で認知されるようになったのは、70年代のシェーキーズによるところが大きいと思います。

元祖ナポリの典型的なピッツァは、ピッツァ・トンダと呼ばれる円形の物。代表的なものはマルゲリータと呼ばれる、トマトソースとチーズ、そしてバジルの葉だけがトッピングされたもので、イタリア国旗の赤(トマト)・白(チーズ)・緑(バジル)を意識したものといわれています。

アメリカナイズされた「ピザ」に食べ慣れた自分たちは、サラミ、玉ねぎ、ピーマンとか、シーフードがどっさりみたいなイメージが定着していますが、イタリアのピッツァはシンプル。もう一つの定番、クアトロフォルマッジも4種類のチーズ(どんなチーズでも可)だけが生地の上にのっているだけ。

トッピングが多いのも、シンプルな物でも、ピッツァは美味しくて、時々やたらと食べたくなりますよね。