俳優でもある岸谷五朗は、まだ十代の上野樹里を自分の所属事務所アミューズに強く推薦し、アミューズは事務所ごと吸収して上野を獲得しました。その岸谷が川崎いずみと共同脚本し、自ら監督をした映画がこれ。何事にもドジな孫娘と、暖かく見守る祖父との関係をブラック(気味な)ユーモア満載で描いています。
沼尻ひろ子(上野樹里)は、やさしく素直ですが、こども時から何をやってもビリでドン臭いため「どん尻ビリ子」とあだ名されてきました。それでもセレブでイケメン男子と結婚が決まり、いよいよ明日は挙式。これまで、ずっと暖かく見守ってきた祖父(北村総一朗)も花嫁姿を楽しみにしていました。
ところが、何とひろ子のストーカーをしていたアパートの大家(寺脇康文)が乱入してきて、偶然落ちて来たハサミが背中に刺さり、形の上ではひろ子によって殺されてしまうのです。祖父のために明日の式までは何とか事件を隠したいひろ子は、スーツケースに死体を入れて町に出ます。
たまたま自動車を手に入れ、富士の樹海を目指しますが、そこで自殺志願者の小林福子(木村佳乃)と知り合います。小林は死体の処理を手伝う代わりに自分を殺してほしいと言い出すのですが、女子二人ではそう簡単に死体を隠すことができません。
こうなったら私を殺せと言い出す小林。私を殺せば、あんたは不幸になる。不幸になったあんたを見て私は幸せになれる、幸せは他人の不幸の上に成り立つのだというのです。でも、ひろ子は、死んだら私が不幸になったのを見れないじゃないと言い返すのです。
いろいろと何だかんだとあった後、途中で死体をゴリラスーツの中に隠し直していたところ、偶然に二人組の外国人の殺し屋(?)がゴリラスーツごと車を盗んでいってしまいました。結果オーライということで、二人は教会に急ぐのでした。
という、かなり支離滅裂な強引なストーリー展開ですが、かつて祖父がひろ子に「失敗しても大丈夫。ひろ子のおかげで周りは幸せになれる」と言った通りで、ひろ子の関わった人々が幸せを掴むということが軸になっています。
ひろ子に車を盗まれた青年(小出恵介)は、憧れのアイドルと対面出来ました。ひろ子と小林を追いかけまわす警官(田中圭)は、殺し屋逮捕により表彰されます。ひろ子と小林を泊めてあげたペンションオーナー(北村一輝)は、探し求めていた幻の蝶を発見し家族と再会しました。小林もやっと運命の相手・・・暴走族リーダー(中尾明慶)とめぐり合い自殺をやめることにします。小林を演じた木村佳乃は、表彰もののキレキレの演技でさすがというところ。
自分の不幸の上に他人が幸せになるということは、結局最後までひろ子には幸せが訪れないのが寂しいところ。何らかの他人の不幸によって、ひろ子にも幸せが訪れる結末でもよかったかもしれません。力み過ぎでかなりのドタバタ調のところはしょうがないと思うのですが、意味不明のロック・ミュージカル風の出だしさえ乗り切れるなら、それなりに楽しめます。