佐藤秀峰のマンガ作品が原作。完結後、すぐにNHKがTVドラマ化(全4回)しています。それらと並行して、フジテレビの亀山千広が映画化に乗り出し、脚本・福田靖、監督・羽住英一郎、海上保安庁の全面協力で作られました。
主人公・仙崎大輔(伊藤英明)は、海が好きという理由でサラリーマンから転職して海上保安庁に入庁しますが、船上勤務に物足りなさを感じ、人命救助の最前線で働くため潜水士を目指して呉にある海上保安庁大学に入校しました。呉の人々は、潜水士課程の訓練に励む彼らを「海猿」と呼んでいました。
同期には優秀で周囲との馴れ合いを嫌う三島(海東健)、体力的に劣り失敗ばかりしている工藤(伊藤淳史)がいました。主任教官の源(藤竜也)は、自身がかつてバディを亡くした経験から「人命救助したいなどと甘いことを考えるな。最前線には楽しいことなど無い」と厳しく訓練生に接するのです。
母の怪我で東京から呉に帰郷した伊沢環菜(加藤あい)は、ファッション誌の編集部で働いていましたが、東京を離れたことで編集長に「もう帰らなくていい」と言われショックを受けます。たまたま仙崎と知り合い、しだいにひたむきに訓練に打ち込む姿が気になるようになりました。
仙崎とバディを組むことになった工藤は、環菜の友人で看護師のエリカ(香理奈)に一目惚れしますが、エリカはなかなか振り向いてくれない。環菜やエリカを誘って仲間とダイビングに出かけた時、偶然に溺れている人を発見した工藤は助けに向かいますが、未熟な工藤は要救助者と一緒に亡くなってしまうのです。
半年間の訓練の最終テストは海の中での作業でしたが、仙崎は源の命令で三島とバディを組みます。しかし、急な潮流の激変によって二人は流されてしまい、三島は岩に挟まれ身動きが取れなくなり、さらにボンベが破損してしまいました。源が常々言っていた「水深40m、バディと二人で取り残された。使えるボンベは一つ。酸素は片道一人分しかない。どうする?」という命題通りの状況に陥ってしまったのです。
これは、はっきり言って監督自身も言っているように、ハリウッドの名作「愛と青春の旅たち」に似たような、ものすごくベタな展開の映画です。どうだ、こんな大変なことが起こっても、どんな辛い目にあっても、最後には大きな喜びが待っているぞという展開で、誰もが予想できる安心のストーリーです。
ところが、意外とそういうところに感動してしまうというのが人の常。そこらへんは実にうまい作りの映画になっています。環菜の母・歌子には朝加真由美、教官には田中哲司、海上保安庁主席監察官に国村隼、同期の訓練生には無名時代の斎藤工や青木崇高らが登場します。
間違いのない感動を味わいたいなら、絶対にお勧めの作品の一つ。細かいことは気にせず、楽しめばいいでしょう。
