伊吹有喜による小説が原作で、2011年にはNHKでテレビ・ドラマ化されています。劇場版映画は黒沢久子が脚本、タナダユキが監督を務めました。四十九日は、仏教の法要として定着している文化ですが、故人の魂が現世からいなくなる日とされています。
熱田良平(石橋蓮司)の妻、乙美(荻野友里)が亡くなった。良平は何もできない日々を送っていました。そこへ、突然厚化粧でロリータ・ファッションの20歳の井本(二階堂ふみ)と名乗る女性がやってきます。井本、通称イモは、乙美が働いていた問題児の社会復帰支援施設の出身で、亡くなる直前に、乙美から良平を助けて四十九日の大宴会を開催してほしいと頼まれていたのです。
東京に嫁いでいた良平の娘、百合子(永作博美)は夫の浩之(原田泰造)との間に子宝には恵まれていませんでした。しかし、愛人が夫の子を妊娠したこと知り、離婚届を置いて実家に戻ってきました。乙美は後妻で、百合子の実の母ではありませんでしたが、百合子は乙美を慕っていました。
乙美は、何かあるとイラストをつけた文章を書き綴ったカードを作っていて、そこには「暮らしのレシピ」とタイトルがつけられていました。良平と百合子とイモは、暮らしのレシピに沿って、家の中の様々なことを片付けていきます。イモの友人で乙美に世話になった日系ブラジル人のハル(岡田将生)も加わり、大宴会を盛り上げるために乙美の人生を年表にして張り出すことにしました。
しかし、いざ書き出してみると、身寄りがいない乙美には誕生、結婚、死亡以外に書くことがまったくないのです。こどもを産まなかった乙美の人生を知るために、彼らは奔走するのでした。
このストーリーは、こどもを産んだ女性にも産まなかった女性にも、それぞれの楽しみ、悲しみ、苦しみがあることを伝えています。ある意味、大変センシティブな部分なので、扱い方によっては大きな批判を巻き起こすかもしれません。
しかし、ここではこどもを産まなかった乙美が、多くの若者を応援して社会に送り出したことで、同等、あるいはそれ以上の影響力を持っていたことが示され、だからこそこどもいない百合子をさらに前に進ませる力となっていると描かれています。
良平のやさしさが乙美に伝わり、乙美のやさしさが百合子や若者たちに伝わり、彼らのやさしさが、巡り巡って乙美の最後の願いを叶えていく。そして、それぞれが個人として、家族として再生していく様子が映画の中にしっかりと映し出されている作品になっています。
