邦画の興行収入成績ランキングというもので、最近は「国宝」が、実写映画としては22年ぶりに「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」の173億円を抜いてトップに躍り出たという話題で盛り上がりました。
それでも、邦画全体しては第8位。なんと第1位から第7位まで、すべてアニメ映画が占めている。実写映画で次にランクインするのは、「南極物語(1983)」で第20位。第10位から第19位もアニメです。ちなみにここまで17作品のアニメの中でスタジオ・ジブリが5作品、新海誠監督作が3作品入っています。
基本的にアニメはほとんど興味が無いので、どうでもいい・・・というと語弊がありますが、自分の場合は映画の世界では、基本的に人間が演技するのを見たいという気持ちが強い。そんな中でも、数少ないアニメ映画として繰り返しみたくなるのが「AKIRA」です。
最初の公開時には、製作費10億円に対して興行収入は7億5千万円で赤字だったので、ランキングにはまったく登場しませんが、その後どんどん話題になり現在までに全世界で50億円を超す収入となっていて、まさにカルト映画という冠名が相応しくなっています。
つまり、興行収入ランキングは、大ヒットした映画を探す目安のひとつではありますが、それが必ずしも名作というものではないことに注意しないといけません。そもそも名作という評価をするための基準はいろいろですし、名作と感じるのも個人の感性によってばらばらです。
日本の代表的な映画評論雑誌である「キネマ旬報」で、オールタイム・ランキングを確認すると第1位は「東京物語(1953、小津安二郎監督)」、第2位は「七人の侍(1954、黒澤明監督)」、第3位は「浮雲(1955、成瀬巳喜男監督)」といった、間違いのない常連が並びますが、ベスト10のほとんどが昭和前半の作品です。もちろん名作であることに異論はありませんが、リアルタイムで初公開時に見たという人はどれだけいるんでしょうか。
比較的新しいそうなのは、第7位の「太陽を盗んだ男(1979、長谷川和彦監督)」、第10位の「家族ゲーム(1983、森田芳光監督)」・「台風クラブ(1985、相米慎二監督)」で、30位までに21世紀の映画は入っていません。また30位まででアニメは「風の谷のナウシカ(1984、宮崎駿監督)」の一つだけが入りました。
オールタイム・ベストとなると、やはり古いものほど有利ですし、一度名作と評価されるとそれ価値を下すわけにはいかないという事情もありそうです。それだったら、キネマ旬報は毎年、その年の優秀作を発表しているので、21世紀の最優秀作品と評価されたものを確認してみましょう。※印は日本アカデミー賞作品賞受賞も受賞したもの。
2001 「GO(行定勲監督)」
2002 「たそがれ清兵衛 (山田洋次監督)」※
2003 「美しい夏キリシマ(黒木和雄監督)」
2004 「誰も知らない(是枝裕和監督)」
2005 「パッチギ(井筒和幸監督)」
2006 「フラガール(李相日監督)」※
2007 「それでもボクはやってない(周防正行監督)」
2008 「おくりびと(瀧田洋二郎監督)」※
2009 「ディア・ドクター(西川美和監督)」
2010 「悪人(李相日監督)」
2011 「一枚のハガキ(新藤兼人監督)」
2012 「かぞくのくに(ヤン・ヨンヒ監督)」
2010 「悪人(李相日監督)」
2011 「一枚のハガキ(新藤兼人監督)」
2012 「かぞくのくに(ヤン・ヨンヒ監督)」
2013 「ペコロスの母に会いに行く(森崎東監督)」
2014 「そこのみて光輝く(呉美穂監督)」
2015 「恋人たち(橋口亮輔監督)」
2016 「この世界の片隅に(片淵須直監督)」
2017 「夜空はいつでも最高密度の青色だ(石井裕也監督)」
2018 「万引き家族(是枝裕和監督)」※
2019 「火口のふたり(荒井晴彦監督)」
2020 「スパイの妻 (黒澤清監督)」
2022 「ドライブ・マイ・カー(濱口竜介監督)」※
2023 「ケイコ 目を澄ませて(三宅唱監督)」
2023 「せかいのおきく(阪本順治監督)」
2023 「せかいのおきく(阪本順治監督)」
2024 「夜明けのすべて(三宅唱監督)」
まぁ、キネマ旬報ですから、やや芸術性に力が入って、エンタメとして面白さは二の次になっている感じはしますが、そこそこ妥当なラインナップというところでしょうか。
さて、いよいよ今年は? という話なんですが、そもそも映画館に足を運ぶなんて面倒くさがりの中途半端な映画ファンとしては(時間も無いけど)、配信やDVD・Blurayでしか鑑賞していないので、リアルタイムからかなり遅れ気味です。
2025年公開の作品としては、「新幹線大爆破」、「室町無頼」、「ショウタイム7」、「アンダーニンジャ」、「ババンババンパイア」、「ファーストキス 1ST KISS」、「フロントライン」の7本しか見ていません。
興行収入もまだはっきり確定した数字はないのですが、いずれにしても実績・評判では「国宝」がぶっちぎりなのは間違いない。各賞に輝く二宮和也樹円の「8番出口」、山田洋二・木村拓哉・倍賞美津子で評判の「東京タクシー」、福山雅治・有村架純共演の「ブラック・ショーマン」、今年破竹の活躍を見せた山田裕貴は「木の上の軍隊」・「ベートーヴェン捏造」・「爆弾」の3本なども注目作です。
その他にも「かくしごと」、「おーい、応為、」、「おいしい給食 炎の修学旅行」、「ナイトフラワー」、「遠い山なみの光」、「宝島」、「かくかくしかじか」、「平場の月」、「ドールハウス」、「君の顔では泣けない」・・・まだまだあるかもしれませんが、思い出すのはこんなところ。
日本国内だけでも年間数百本の映画が作られているわけで、それらの評価はピンキリですが、少なくとも、洋画に比べて元気がある。大金を費やしてCGてんこ盛りのヒーロー映画ばかりになってしまったハリウッドには、魅力が無くなったと思っている人は多いのではないでしょうか。お金をかけていない分、邦画には中身で勝負の作品が多いように思います。これからタイミングがきたら、これらのタイトルを少しずつ見ていきたいものです。
