2025年12月26日金曜日

ぼくのお日さま (2024)

監督の奥山大史は1996年生まれ。青山学院大学卒業制作として長編の「僕はイエス様が嫌い(2019)」を製作し、スペインのサンセバスチャン国際映画祭に出品し、史上最年少の最優秀新人監督賞を受賞しました。本作は監督の長編2作目、初の商業映画で、男女のデュオユニットであるハンバートハンバートの「ぼくのお日さま」に強くインスパイアされて作られました。

北海道の中学生タクヤ(越山敬達)は、夏は野球、冬はアイスホッケーをするのですが、はっきり言って下手糞で吃音のせいであまり主張することも苦手。スケートリンクで、同じ年頃のサクラ(中西希亜良)がフィギュアスケートの練習をしているのを見たタクヤは、思わずその美しいスケーティングに見入ってしまいます。

サクラのコーチは、元プロスケーターの荒川(池松壮亮)で、真剣にサクラを見つめるタクヤに気がつくと、彼にも自分の昔の靴を貸し与えてフィギュアを教えることにします。タクヤは、フィギュアに夢中になり、一生懸命練習しみるみる上達していくのです。

荒川は、タクヤとサクラをペアにしてアイスダンスをすることを提案します。初めは乗り気ではないサクラでしたが、しだいに楽しくなり、タクヤとの息もぴったりになっていきます。そして、大会に出場するための検定を受けることになるのですが、その直前サクラは町で荒川が同性の男性(若葉竜也)と一緒に楽しそうにしているところを見てショックを受けます。

荒川が同性愛者だったのです。サクラは、荒川に「タクヤと一緒にいたいから教えているんですか」と言うと、検定会場には現れませんでした。タクヤは「本当はアイスダンスをやりたくなかったんだ」と言うだけで、再び下手糞なアイスホッケーの練習に戻るしかありませんでした。

奥山監督は、これからの邦画界を背負って立てる逸材としてたいへん注目されています。この映画は、まず目を引くのは映像の美しさ。屋内のスケートリンクでも、屋外の凍結した湖でも、計算しつくした光をコントロールしています。

また、オーディションで選ばれた越山敬達と中西希亜良はフィギュアの経験者で、監督の期待に応えた素晴らしい演技をしています。また池松壮亮も特訓を受けて、そこそこにスケートコーチらしくなっているところは、さすがとしか言いようがありません。

タクヤはせっかく自分を表現するチャンスを得たのですが、サクラが来なくなったことでそれを失ってしまいます。サクラも、自ら一つの楽しみを捨てることになる。荒川も、おそらくかつて見た夢を二人に託すつもりだったのが、結局は町から出ていくことになってしまうのです。三人が三人とも夢を失うという辛いストーリーですが、監督はそれをリカバーしてハッピーエンドに持って行こうとはしません。

通常見なくても良いエンドロールですが、この作品では主題歌と位置付けられた「ぼくのお日さま」が流れ、キャスト・スタッフの文字の間に歌詞がしっかりと映し出されています。つまり、その歌の中にストーリーの結末が歌われているような感じで、絶対に最後まで一字一句集中する必要があるのです。