夏季臨時休診

夏季臨時休診のお知らせ 8月14日(金)~8月19日(水)臨時休診します。

2026年7月26日日曜日

Street Legal (1978)

 


日本・ニュージーランド・オーストラリアでの公演から帰国したボブ・ディランでしたが、「Rolling Thunder Revue」以来、バンドのまとめ役だったベースのロブ・ストーナーがバンドから抜けてしまいました。新しいディランのラスベガス風のスタイルに納得できなかったことと、年末まで長いツアー予定に不安を感じていたことが原因と考えられています。

代わりに加わったのはThe Doorsを経てエルビス・プレスリーの最後のバックを務めたジェリー・シェフで、メンバーはすぐさまランダウン・スタジオに入り新作の録音を開始しました。今回も、4月末からわずか1週間で録音を完了しているのはさすがとしか言いようがない。

ニュー・アルバム『ストリート・リーガル』は、それまでのボブ・ディランのフォークやアコースティックなイメージを覆す、ホーン・セクションや女性コーラスを大々的に導入した、ソウルフルかつゴージャスな「ビッグ・バンド・サウンド」が最大の特徴です。ただし、本来リハーサル用のディランのプライベート・スタジオでライブ感覚で収録されたので、楽器間の分離が悪く発売されたレコードは音質的にはかなり難がありました。しかし、1999年にリミックスされ、奇跡的な音質改善が図られたことでより評価が高まりました。

ディランは離婚騒動、映画「Renaldo & Clara」の失敗や「Rolling Thunder Revue」による経済的な打撃など、精神的にも肉体的にも多くの問題を抱えている中で、自らをリセットする気持ちが世界ツアーやアルバムに刻まれ、ツアー後の改宗を予感させるようなものが漂う内容となりました。とはいえ、表面的には今までになくポップな感じで、歌い方もディランとしては丁寧なので聞きやすいアルバムになっています。

1曲目は「衛兵の交代」というタイトルで、タロットカードや中世の騎士が登場し、自分が登場してから世界は崩壊に向かい、新しい支配者へ移行しているという難しい内容で、ディランのボーカルに女性コーラスがコール&レスポンスで被さるところは、ゴスペル風の仕上がりになっています。次は「新しい仔馬(女性の比喩)」を飼っているのですが、その名はルシファー(堕天使)という不穏な名前で可愛らしいタイトルなのに泥臭いブルースです。

「泣かないで、僕がそばにいる、すべてうまくいく」と女性を慰めたかと思えば、「君の愛は本物なのか?」と疑ったりします。「セニョール」は、謎の人物に「我々はどこへ向かっているのか?」と世界に絶望して問いかける。傷つけ合った恋人たちは、お互いを許し忘れるしかないので、「もう話し合って終わりにしよう」と別れを告げるという具合に、サラとの別れを感じないわけにはいかない曲が続きます。そしてラストで、暗闇を通り抜けて長い旅が終わり「僕にはまだ息がある」で締めくくられ、何とか生き抜く決意を新たにして終わります。

6月には世界ツアーの第2レグの開始と同時にこのニュー・アルバム「Street Legal」が発売され、順調に売り上げを伸ばし前2作に匹敵するヒットになります。ツアーはロンドンの6公演から始まり、オランダ、ベルギー、西ドイツで4公演、7月にはパリで4公演、さらにスウェーデン、西ドイツで4公演の後、イギリスに戻って7月15日まで続きました。

メンバーは2か月間の休養の後、9月15日からカナダを含む全米を回る過酷な65公演を12月16日まで行い、全114公演という世界ツアーは終了しました。しかし、さすがに11月以降、ディランの喉の調子が悪くなり、ただでさえしゃがれた声がさらにかすれてしまいます。疲労のピークになった11月17日、サンディエゴでの公演で、またもや伝説が生まれました。

 ライブの終盤、ステージの苦し気なディランに向かって、観客席から小さな銀の十字架(シルバー・クロス)が投げ込まれたのです。 普段のディランであれば、ステージに投げ込まれた物は無視するところですが、この日はなぜか足元の十字架を拾い上げポケットにしまったのです。

翌日、アリゾナ州へ移動したホテルで、ディランはさらに体調が悪化し、思わず銀の十字架を身につけたのです。すると「イエス・キリストが部屋に現れ、自らの体に直接手を置くのを感じた」と本人が後に語っています。この「個人的なキリストとの出会い」という決定的な体験によって、ディランは生まれながらのユダヤ教からキリスト教へと改宗することになるのです。


Changing of the Guards
New Pony
No Time to Think
Baby, Stop Crying
Is Your Love in Vain?*
Senor (Tales of Yankee Power)
True Love Tends to Forget
We Better Talk This Over
Where Are You Tonight? (Journey Through Dark Heat)

Bob Dylan (vo, g)
Steve Douglas (ts, ss), David Mansfield (vn, mandolin)
Alan Pasqua (key), Billy Cross (g), Jerry Scheff (b)
Steven Soles (g, back.vo), Ian Wallace (ds), Bobbye Hall (perc)
Carolyn Dennis, JoAnn Harris, Helena Springs (back.vo)
*Steve Madaio (tp)

April 25 ~ May 1, 1978, Santa Monica, California

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