年末年始休診のお知らせ

年内は12月28日(月)午前まで(午後は休診)です。 12月29日(火)~1月4日(月)は休診します。

2023年1月30日月曜日

Paavo Jarvi / Nielsen Complete Symphonies (2009-2013)

カール・ニールセンは、デンマーク出身の作曲家。1865年生まれで、生まれが近いのはリヒャルト・シュトラウス、ドビュッシーなど。デンマークは、一般にはヨーロッパ大陸の北の端という認識ですが、スカンジナビア半島とヨーロッパをつなぐ要衝ですから、通常は北欧四国として扱われます。

デンマークの王立オーケストラでバイオリン奏者としてのキャリアが長いニールセンは、作曲した曲の中心は管弦楽曲。曲調は後年かなり進歩的だったため、堰か膳の評価は必ずしも高いとは言えなかったようです。1931年に66歳で亡くなりましたが、評価が高まったのは60年代以降にレナード・バーンスタインが取り上げてから。

やはり一番人気は6つある交響曲。とは言え、まだまだ全集を録音した指揮者はあまりいない模様。全集として定番は、現状ではブロムシュテットあたりでしょうか。でも、自分のチョイスは、パーヴォ・ヤルヴィ。オーケストラはフランクフルト放送交響楽団で、2009~13年に録音されました。

この組み合わせは、実に相性が良い。ヤルヴィ+フランクフルトのマーラーの全集のビデオ作品がありますが、こちらもなかなか優れもの。これらの作品の頃は主席指揮者だったので、当たり前と言えばそうなんですけど、お互いに敬意をもって接している感じが伝わってきます。

北欧の作曲家は、ロマン派台頭の時期に登場していることもあってか、ドイツ的ではないし、かといってスラブ系の民族色の強い雰囲気とも違う。もちろん、フランスの印象派のムード一色でもないし、やはり独特のメロディとかリズム何だろうと思います。

主張しずぎないので、ちょっと聞くと取り留めのない印象なんですが、どこか力強さを感じることが多く、少なくとも聞きにくい音楽ではありません。

交響曲ならベートーヴェンだ!! とか決めつけないで、詩情豊かな雰囲気のある大曲として、北欧の音楽も是非聞きたいものです。

Eva Knardahl / Grieg Complete Pino Works (1977-80)

クラシック音楽の作曲家というと、どうしてもドイツ、フランス、イタリアあたりが中心になるのは、歴史的にもしょうがない。でも、バロック、古典ときてロマン派が出現するころから、ヨーロッパ大陸の北の方にも後世に名を残した偉大な作曲家が登場しました。

エドヴァルド・グリーグは、ノルウエーの人。生まれは1843年で、年が近いのは東にチャイコフスキー、ドヴォルザーク、フランスにはシャブリエとかフォーレがいます。

さて、グリークと言えば、誰もが知っている一番有名な曲が組曲「ペール・ギュント」でしょう。「朝」のすがすがしさ、「魔王の広間」のメロディなどは聞けば絶対わかると思います。そして、ちょっとクラシックを聞く人なら、ピアノ協奏曲も有名。ひと頃テレビCMにも使われていました。

グリークの生まれたのはベルゲン。地形が名高いフィヨルドを下りきった北海に面した海岸沿いの街です。ライプツィヒに出て音楽を学び、20歳頃からデンマークで作曲活動を開始しました。ピアニストとして活躍する傍ら、オスロで指揮者を務めたりしつつ、民族性を重視した曲作りを特徴としています。1907年に故郷で病没、64歳でした。

一部の管弦楽曲を除いて、残された曲のほとんどはピアノ演奏曲と歌曲です。自分はよく知らずに、たまたまピアノ協奏曲も含まれているピアノ独奏曲全集を「安かったから」という理由でだいぶ前に購入していました。

演奏者はエヴァ・クナルダール。グリークと同じノルウェー出身のピアニストで、この全集が出るちょっと前に亡くなっているのですが、写真を見ると「おばちゃん」風。ところが、このおばちゃんはノルウェーの音楽界では重鎮で、かなり有名らしい。

グリークのピアノ全集というのも、これが世界初。1977年から80年にかけて録音されました。ものすごく世界中から高く評価されている全集なんだそうです。CD12枚という大ボリュームなんですが、グリークの代表作とされる伃情小品集が圧巻の冒頭3枚を占めています。ノルウェー、特にベルゲンの地域性に根付いた閉塞感、厳しい寒さ、だからこそ春の温かみの高揚感などが余すところなく表現されています。

続いてノルウェー民謡に基づく小品、舞曲集などが続きます。「ペール・ギュント」で、ちょっと一息。その後はまた同じような曲が続くので、悪くは無いのですが、さすがに一度に聞き続けるのは疲れそう。慣れるまでは、一枚づつ丁寧に聞き馴染んでいくのがお勧めです。

2023年1月29日日曜日

Khatia Buniatishvilli / Labyrinth (2020)

若手女流三大ピアニスト、と自分が勝手に思っている一人がカティア・ブニアティシヴィリ。ソビエト圏グルジア、今はジョージアと呼ぶ国の出身で、なかなか名前が覚えにくい。他の二人、アリス紗良オット、ユジャ・ワンと比べて、圧倒的なグラマラスな美女。


音楽家なんだから、容姿の事をとやかく言うのは無粋ですし、いまどきだとセクハラになってしまいますが、演奏中の動画などを見ると、本人は明らかにそこんとこを意識したタイトなドレス姿を披露しているので、評価ポイントの一部に入って来るのはいたしかたがない。

プーチンがウクライナ侵攻するかなり前から、プーチンの事が大嫌いなのは有名で、ロシアでは演奏はしないし、プーチン推しの演奏家との共演は拒否というから筋金入りです。

3人の中では一番遅い2010年にSony Classicalからメジャー・デヴュー。しかも、アリスと同じようにリスト・アルバムで、こちらは難曲ロ短調ソナタで勝負してきたのは恐れ入ります。当然、テクニック的には申し分ないわけですが、独自の解釈が強く曲に深く入り込んだ演奏が持ち味と言えそうです。

だからと言ってソロイスト向けというわけではなく、オーケストラとの共演などでの協奏曲での協調性は抜群ですし、ソロ・パートでの「らしさ」みたいな表現力は好感が持てます。

アルバムは、ソロ物と協奏曲物をバランスよく出していますが、間に若手バイオリンの旗手ルノー・カピュソン、ベテラン・バイオリンのギドン・クレメールらとの室内楽も挟み、順調な活躍ぶりと言えそうです。

目下のところ、最新作は2020年の「ラビリンス(迷宮)」ですが、最近のアーティストはクラシックと言えど、アルバムとしてのコンセプトをしっかり持っている。昔のように安易に作曲家や曲名だけのタイトルを付けることは少なくなりました。

このアルバムは、モリコーネ、サティ、ショパン、リゲティ、バッハ、ラフマニノフ・・・などなど、国も年代も違う作曲家のピアノ小品を集めたもので、一見ごちゃごちゃのように感じますが、聞いてみると全体の一体感があり、違和感はありません。かっこよく言えば、時空を超えて散歩するかのような音楽の迷宮に入り込んでしまったような楽しさです。

ベテランの過去の名演を楽しむのもいいですが、このような若手の新しいクラシック音楽へのアプローチは、音楽の命を未来につなぐものとして必要なことだろうと思います。

2023年1月28日土曜日

Yuja Wang / Berlin Recital (2018)

クラシック音楽界の三大女流ピアニスト(と、自分が勝手に決めている)の中で、最も王道を進みトップに君臨しているのがユジャ・ワンだと思います。

北京で生まれたユジャは、15歳以後に世界中のコンテストで入賞し注目され、2009年、名門ドイツ・グラモフォンから満を持してデヴュー。以後、クラシック・ピアノの普遍的な名曲を中心に活躍しています。

いかにも東洋人と言える風貌で、グラマラスとは言えない(失礼!!)小柄な体格ですが、ヘア・スタイルや衣装はしばしば議論を招くほど先鋭的。まさに今に生きる若者という感じで、それらも含めて話題性も十分にあります。

体格的には西洋人より不利なはずなのですが、驚くべきべき指の運び(運指)と力強さ(打鍵)によって、まったくそのハンディを感じさせません。父親が打楽器奏者だったので、そこからの影響がかなりあるのだろうと想像します。

2009年のクラウディオ・アバド指揮でルツェルン音楽祭のライブ映像では、しばしば取り上げているプロコフィエフの協奏曲第3番を楽しめますが、この難曲を弾き切る姿は感動物です。

2018年のクラシックの聖地、ベルリン・フィルの小ホールで行われたリサイタルの模様は、通常のCDとして発売されていますが、そのほとんどがドイツ・グラモフォンのYouTubeチャンネルで動画として公開されているのも驚きです。

おそらく得意な曲で構成され、日頃から弾き馴染んでいるものを気楽に演奏するのではなく、むしろ何度も弾いてきた集大成を聞かせるような緊張感がみなぎっています。

まずは、力を入れている作曲家の一人であろうラフマニノフの小品4曲、スクリャービンのソナタ(No.10)、圧巻のリゲティ練習曲3曲、そして白眉となるプロコフィエフのソナタ第8番という構成。ユジャの超絶テクニックだけではなく、深い洞察力に基づくリリシズムが溢れるステージになっています。

もっと聞きたいという方は、アンコールで演奏された4曲がストリーミングのみで配信されています。ドイツ・グラモフォンはCDジャケットも従来からの王道デザインにしているところからも、レーベルを代表する正統派ピアニストと位置付けているのが伝わってきます。

2023年1月27日金曜日

Alice Sara Ott / Echoes of Life (2021)

自分の中では、三大若手女性ピアニストと言えるのが、中国出身のユジャ・ワン、ジョージア出身のカティア・ブニアテシヴィリ、そしてドイツ人の父と日本人の母親から生まれたアリス・紗良・オット。

ユジャ・ワンは1987年2月生まれ、カティア・ブニアテシヴィリは1987年6月生まれ、そしてアリス・紗良・オットは1988年8月生まれ。そもそも、みんな美人だし、ピアニストとしての実力もまったく申し分ありません。

日本人とのハーフということで、アリス・紗良・オットは贔屓したくなるというもの。メジャー・デヴューのリストの「超絶技巧練習曲」やベートーヴェンのアルバムを買ったときに、ブログでも取り上げました。

他の二人に比べるとやや活動が低調な印象で、どうしてるのかなぁと思ったら、実は病気だったんですね。それも、多発性硬化症という日本では難病とされている病気。手足のしびれや運動障害を起こす可能性が高く、ピアニストとしては致命傷になりかねない。

無理せず、周りの事は気にしないで、あくまでも健康第一に少しずつ音楽を続けてもらいたいものです。そこで、目下のところの最新作の紹介。

自身のコメントが出ています。「このアルバムは、私の人生に今も影響する想いや瞬間を映し出しているだけでなく、今日のクラシックの音楽家として自分自身をどのように見ているかを描いた音楽の旅路です」とのこと。

以前のクラシックのアルバムではありえない構成なのは、メインはショパンの前奏曲 作品28の24曲なんですが、数曲ごとに現代の作曲家の小品を7曲挟み込んでいるところ。伝統至上主義では絶対に許されませんが、一定の形を尊重しながら現代に生かしていくことは、古典的文化の価値を現在、そして未来にまで続かせることになる。

特に最終曲は自作というのも力の入れようが伝わるというものですが、それ以外の現代曲はフランチェスコ・トリスターノ、ジェルジュ・リゲティ、ニーノ・ロータ、チリー・ゴンザレス、武満徹、アルヴォ・ペルトのものです。知らない作曲家もいるんですが、100年以上前のショパンとのコラボは意外と面白い。

ショパンの前奏曲集と思って聞くのではなく、アリス・紗良・オットのコンセプト・アルバムの中にショパンも使われているという感覚で聞くのが正解。もちろんショパン・アルバムとしても優れており、どうしても従来のフォーマットにこだわりたいなら、現代曲は飛ばして聞けばいいんですけど、だったらアリス・紗良・オットでなくてもいいことになります。

2023年1月26日木曜日

Dietrich Fischer-Dieskau / R.Strauss Lieder (1967-70)

リヒャルト・シュトラウスは、1864年生まれで、戦後の1946年に亡くなった作曲家です。名前は知らなくても、キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」で使われた「ツァラトゥストラはかく語りき」は知らない人はいないくらい有名です。歌劇でも「薔薇の騎士」、「エレクトラ」などは、現在もコンスタントに上演されます。

音楽の傾向としては、実は自分としては苦手な後期ロマン派の潮流の中心で、どこで感動すればいいのかよくわからないところが悩みの種。ところが、けっこうたくさんある歌曲となると、これがなかなか良い感じなのです。

20世紀が生んだ史上最高のバリトン歌手、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ。おそらく、現存する演奏可能なリート(ドイツ歌曲)は、すべて網羅し録音を残しました。他にも、オペラへの出演や音楽祭への客演も多数あり、そのディスコグラフィーを完成させることはかなり困難です。

一個人が蒐集するなら、ある程度有名な作曲家に絞って、何度も歌われたものの中から最も評判が良いものに限定するのが現実的。当然、シュトラウスもその中に含まれます。

フィッシャー=ディースカウは、全集を意識したまとまった録音を二度行いました。最初は1967年から1970年にかけてEMIレコードに、そして二度目は80年代前半にドイツ・グラモフォンに行いました。

収録されている曲はほぼ同じなので、どちらを選んでもよさそうなのですが、やはりキャリアの上からフィッシャー=ディースカウの声の全盛期と言える60~70年代をチョイスするのが無難というもの。ピアノ伴奏は、EMI盤は盟友ジェラルド・ムーアで、DG盤はヴォルフガンク・ザパリッシュです。

しかも、CD3枚のEMI盤は現在はワーナーから格安のボックスが販売されていて手に入れやすい。シュトラウスだと構えて聞くと意外に聞きやすいのは、フィッシャー=ディースカウの歌唱によるところが大きいのかもしれません。バリトンと言ってもテノールまで含まれそうな音域と、柔軟な表現力、甘美な声質、どれをとってもさすがと思わせる歌唱は、本当に他の追従を許さない。

ただし、例によってフィッシャー=ディースカウの場合、「全集」と言っても歌詞の内容や、女声と指定されたものは省かれる。特にシュトラウスの歌曲を聞こうとすると、最も有名な「4つの最後の歌 (Vier Letzte Lieder, 1948)」が女声用なので含まれていないのが残念なところ。

これについては、古今あまたの名演がありますので、好きな女性歌手のものを聞けばいいんですけど、自分の場合は黒人のソプラノ歌手、バーバラ・ヘンドリックスがまとまった録音を残していたのでチョイスしました。


2023年1月25日水曜日

Friedemann Eichhorn / Liszt : Works for Violin and Piano (2007)

フランツ・リストと言えば、誰もが知っているクラシックのピアノ音楽のショパンと並ぶ二大巨匠のひとり。

ショパンと比べてという話になると、いろいろ長くなるのでここでは触れませんが、個人的にはショパンより作曲家としての功績はリストに軍配があがるように思っています。

ピアノ独奏曲だけでも、演奏時間にするとショパンは全作品でCD12枚程度ですが、リストは60枚くらい必要。他人の曲のピアノ独奏用編曲もいれたら、90枚くらいになろうというから凄いことです。ショパンはオーケストラ物は2つの協奏曲とニ三の小品だけですが、リストは協奏曲以外に交響詩、宗教曲などでCDにして15枚くらいは必要です。

二人に共通しているのは、室内楽曲があまり無いところ。ショパンはピアノ・トリオとチェロ・ソナタが1曲づつと小品でCD1枚に余裕で入ってしまいます。リストの方が多少多いといっても、せいぜいCD2枚分程度。

もっとも、ショパンが39歳で亡くなったのに対して、リストは74歳まで生きましたので、差があって当然ですけど、そこを差し引いても作曲家としての業績は歴然としたものがあるように思います・・・が、何かとショパンの方がいろいろと話題になる。

それはともかく、最も曲数の少ないリストの室内楽のCDは大変少ないので、それほど選択肢がありません。このCDの演奏者、フリードマン・アイヒホルンは現在50歳をちょっと過ぎたくらいのドイツのバイオリン奏者で、伴奏のピアノは現在80歳近いロルフ=ディーター・アレンス。

二人の共通点は、どうやら上司と部下らしい。リストが最も作曲家活動が活発だったのは、中年期のワイマールに住んでいたころ。ワイマールにはリストの名前を冠した音楽大学があり、二人はそこで教鞭をとる間柄。このCDが録音された2007年は、アレンスは大学の学長で、アイヒホルンはおそらく優秀な教員のようです。

ピアノ曲では巨匠然として技巧的な曲が多いリストですが、ここでは哀愁を感じる実にメロディアスな旋律を聞くことが出来ます。そもそもタイトルが「エレジー」や「ロマンス」ですから、それも当然。こういう曲をもっと作っていたら、リストの室内楽も注目されたのかもしれません。

2023年1月24日火曜日

Zee Avi (2009)

たぶん、知っている人は多くない。

Zee Aviは、マレーシアの女性歌手で、「ジー・アヴィ」と呼びます。

ウクレレやギターを持って歌うのが基本スタイルですが、一言でいうと「究極の癒し系」の歌声です。

マレーシア・・・って、どうなのと思うかもしれませんが、歌はほとんど英語で、それもネイティブっぽいきれいな英語です。

がちゃがちゃした音はほとんど聞こえず、特に朝に聞くのが一般いいかも。優しい気持ちでになれます。

BGMとして流してもいいけど、ついつい聞き入ってしまいます。

2008年の自身の名前だけのデヴュー?アルバムと、二枚目の2011年の「Ghostbird」の二枚のCDでお気に入りなんですが、その後あまり話題にならなくなったような・・・

でも、2014年に「Nightlight」、そして2019年には「Good Thing」というアルバムが出ているようです。「Goodthing」はタイトル曲だけストリーミングでありますが、アルバム自体は少なくともAmazonでは売っていません。

いゃぁ~、もっとたくさんの人に聞いてもらって、簡単にアルバムが手に入るようにしてほしいものです。


2023年1月23日月曜日

山口百恵 / メビウス・ゲーム (1980)

山口百恵の何が凄いか・・・って、もういろいろな人がいろいろな所で言いつくしていることですが、自分なりに思っていることをチョットだけ。

それまでの日本の大衆歌は、いわゆる演歌と歌謡曲でした。その違いを言葉で言うのは難しいのですが、昭和の日本人は感覚的に判別できていたんですよね。戦後日本の文化はほとんどがアメリカから入って来たものを、日本人なりに作り直したものだと思いますが、歌の世界ではポップス系が混ざったのが歌謡曲で、60年代からはフォークも広がり始めました。

フォーク・ソングは、どちらかというと体制に対する不満のはけ口みたいなところがありましたが、70年代になってしだいに恋愛模様が歌われるようになると、かなり丸くなって荒井由実に代表されるようなニュー・ミュージックと呼ばれる展開につながります。

山口百恵は、まさにそんな歌謡曲の過渡期に登場したわけで、1973年のデヴューから最初の数年間は、王道歌謡曲の作詞家・作曲家が歌を作り続けました。ただ、他のアイドル歌手と違ったのは、女の子が背伸びをする心情を歌に乗せたことで、大人っぽい雰囲気を作り上げたところ。

よく言われることですが、山口百恵の転換期を作り出したのは宇崎竜童・阿木曜子夫妻。宇崎竜童のデヴューは山口百恵と同じ1973年で、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドでの「スモーキン・ブギ」が大ヒット。正統派ロックン・ロールのようで、おちゃらけた歌詞が大うけ。

実は宇崎・阿木コンビを指名したのは山口百恵本人と言われていて、最初のアルバム用の曲がよかったのか、ついに1976年「横須賀ストーリー」でシングル発売となり、大ヒットとなりました。その後も1980年の引退まで、70曲ほどが宇崎・阿木コンビから提供され、シングルはことごとくヒットしたというのはよく知られていること。

この転換点から、山口百恵は歌謡曲からJPOPの元祖に生まれ変わったと思っているんですが、実際、桜田淳子は最後まで歌謡曲アイドルだったし、森昌子もずっと演歌歌手だと思います。

それまで、その時の年齢がアルバム・タイトルに使われていたりしましたが、「横須賀ストーリー」以後は、アルバム全体のコンセプトがはっきりしてきて、アルバムをイメージするタイトルが使われるようになります。1977年の「GOLDEN FLIGHT」では、初めて横文字だけのタイトルが採用され、ロンドンで現地ミュージシャンを採用してのロック色を強めた録音。

1978年のアルバム「COSMOS(宇宙)」は、初めての完全なコンセプト・アルバムで、宇宙をテーマに自由に飛び回る世界が描かれています。自身が初めて作詞した「銀色のジプシー」は、作曲が浜田省吾という豪華な組み合わせで、個人的にはBEST10に入るくらいの出来です。

オリジナル・アルバムは6年5か月で22枚という、もともとハイペースでアルバムが出ていましたが、引退の年は2月、5月、8月、そして10月と4枚のアルバムが発売されました。今ではありえない話。

この中では特に「メビウス・ゲーム」の出来が凄い。もう完全に歌謡曲の作りじゃない。フェードアウトして打楽器の音だけが残って次の曲に自然につながったり、ヒットした「ロックン・ロール・ウィドウ」も、イントロ変えて、中間のギター・ソロもたっぷり聞けたりして、作りこみが半端じゃない。

今年はデヴュー50周年、引退から43年。あ~、昔々の話になってしまいましたけど、あらためて今の耳で聞いてみると、JPOP化した以降のアルバムは十分鑑賞に耐えることに驚きます。もしも、もしもですけど、今、山口百恵のCDとか買いたいと思うなら、ベスト盤はやめましょう。横文字、カタカナ・タイトルのアルバムを一枚一枚買うのが絶対にお勧めです。

2023年1月22日日曜日

Carole King / Tapestry (1971)

間違いなく、自分の音楽趣味を掲載させたレコードの一枚。

中学生になって、ジャンルにとらわれずどんな音楽でも聴いた頃でしたが、うるさいくらいのハード・ロックを好む反面、サイモン&ガーファンクル、ジョーン・バエズと共にアメリカのフォークも好きでした(何故かボブ・ディランだけは苦手・・・)。

キャロル・キングは、アコースティック・ギターが主流のフォークの中で、ピアノの弾き語りというスタイルが新鮮でした。セクシーな感じとは程遠い、ハスキー・ボイスですが、そこが妙に落ち着くんですよね。

邦題は「つづれおり」で、何のことかわかりませんでした。「綴れ織」は日本の着物の織り方の一つで、「タペストリー」も似たような織り方をする西洋の壁掛け用装飾で微妙に違いのですが、どっちのタイトルも何となくアルバムにしっくりくる感じがします。

80歳になっている現在まで、音楽活動は続けているようですが、最大のヒットはこのアルバムで、特に「You've got a friend(君の友だち)」、「It's too late」は日本でも大ヒットし、今でもポップスのスタンダードです。

中学になると英語の勉強が始まるのですが、キャロル・キングの歌も個人的には格好の教材だったように思います。「~もまた、」という意味で終わりに使う「too」は、先に出ると「~すぎる」という意味になるというのは、間違いなく歌で知ったこと。「You've got a friend」も、辞書を引き引き訳を調べました。

When you’re down and troubled
And you need some loving care
And nothing, nothing is going right
Close your eyes and think of me
And soon I will be there
To brighten up even your darkest night

君が落ち込んで困っている時、
そして何らかの優しい手助けが必要な時
目を閉じて僕のことを考えてごらん
そしたらすぐに僕はそこにいて
君の暗い夜さえも明るく照らしだす

You just call out my name
And you know wherever I am
I’ll come running to see you again
Winter, spring, summer or fall
All you have to do is call
And I’ll be there
You’ve got a friend

僕の名を呼ぶだけでいいんだ
君は僕がどこにだっているのを知っている
僕は君に会いに、また走って行く
冬でも、春でも、夏でも、そして秋だって
君がするべきことは、ただ僕を呼ぶだけ
そしたら僕はそこにいる
君には友だちがいるんだ

今でも、辞書なしでも理解しやすい英語で、歌を聞いていてもヒアリングで大意を掴みやすい曲です。長い人生、そんなともだちが一人だけでもいたらいいですね。


2023年1月21日土曜日

Schubert Lider -女声および重唱のための- (1973-75)

ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウがどんだけすごい歌手だったかは、知れば知るほど思い知らされます。2012年に亡くなるまで、生前にほとんど聞いていなかったことが悔やまれる。

もちろん、シューベルトの歌曲を一人で集大成したことが最大の功績何だろうと思いますが、実は男声で歌えるリート(ドイツ歌曲)で、フィッシャー=ディースカウが録音を残していない物探すことはほとんど難しい。

フィッシャー=ディースカウのディコグラフィから、歌詞の内容から女声用とされる歌曲だけが省かれているのはしょうがない。しかし、そこはクラシック音楽界の老舗、ドイツ・グラモフォン・レコードはぬかりがありません。

フィッシャー=ディースカウが自分の全集から省略した、シューベルトの歌曲をちゃんとまとめ上げています。つまり、女声用歌曲、混声二重唱、重唱、合唱を集めたわけで、しかも可能な限りフィッシャー=ディースカウも参加しているというのですから素晴らしい。

CDで8枚組です。最初の3枚は、ソプラノのグンドゥラ・ヤノヴィッツで占められ、クラシックを知らない人でも耳にしたことがある有名曲が目白押しです。4枚目はソプラノのクリスタ・ルードヴィヒ。60~70年代のクラシック界を支えた美声二人がたっぷりと聞けます。

後半は、フィッシャー=ディースカウを軸に、ヤノヴィッツ、ジャネット・ベーカー、エリー・アメリング、ピーター・シュライヤーらのオールスターが入り乱れて歌い上げていくという、まぁ贅沢の極みみたいな内容です。

ただし、残念なことに現在は廃盤になっているので、中古品を探すか、それぞれ単独のアルバムをバラバラにてに入れるしかありません。自分はAmazonで5000円くらいで手に入れましたが、フィッシャー=ディースカウ単独の全集と並べるとなかなか壮観です。

2023年1月20日金曜日

もんじゃ焼き


一般に定説といわれているのは、水を入れすぎて失敗したお好み焼きが原形で、店で提供されるれしぴとしては戦後の東京・浅草が発祥とされます。

80年代に、東京都中央区月島で「もんじゃ焼き」を提供する店が人気となり、一気に店が増えたことで、一般に「もんじゃ」と言えば月島というイメージが出来上がりました。

呼称については、「文字を書くように汁を流し入れる」ことから「文字焼き」と呼ばれたのが「もんじやき」、「もんじゃ」と変化したものらしい。

さて、ひさしぶりに「おうち」もんじゃ焼きをしたんですが、以前にやった時はもっと大きなホットプレートがあったんですが、時代が移って今のは小さい。

何か、キャベツばかりが目立って、野菜炒めみたいになっていますが、火が通れば問題ありません。

最初は定番の明太子と餅、2回目はシーフードとチーズ、3回目と残った具材と白菜キムチという具合に、味変させて楽しみました。

お好み焼きと比べて、圧倒的に小麦粉が少ないので、「粉物」と言っても罪悪感が少ないのが嬉しいかもしれません。

2023年1月19日木曜日

レオナルド・ダ・ヴィンチのワイン


正確に言うと、ダ・ヴィンチの育った村で作られたワイン。

そもそも「レオナルド・ダ・ヴィンチ」という名前は、「ヴィンチ村」の「レオナルド」という意味で、そのヴィンチ村で作られているワインということ。

場所はトスカーナ。ローマより150kmくらい北上した、フィレンツェのある州です。フィレンツェからは、西に20kmくらいのところにヴィンチ村があります。レオナルドの生家も残っています。

実際は、第二次世界大戦後からワイン作りが本格化して、もしかしたらレオナルドが飲んだワインを作ったブドウの木が代々続いてきたのかもとれない・・・というと、ちょっとロマンがありませんか?

トスカーナには、スーパー・トスカーナと呼ばれる、イタリアの公的なワインのランキングに沿わない極上のワインがあったりします。公的なお墨付きを得るためには、厳格な原料・製法を遵守しないといけないので、ランク付けに縛られずにもっと美味しさを追求したいということ。

ダ・ヴィンチ村のワインは、一本数万円することもあるスーパー・トスカーナと同じような自由な発想で作られたワインで、赤ワインは、サンジョヴェーゼ、メルロ、シラーをブレンドしたライト・ボディ、サンジョヴェーゼだけのミディアム・ボディ、シラーだけのフルボディ、そして白はヴェルメンティーノが使われています。

ランク付けはありませんが4本のセットで約1万円なので、比較的手を出しやすいところが嬉しい。他でも売っているかもしれませんが、Amazonでコンスタントに販売されていて買いやすいところもGoodです。セールスのタイミングだと2~3割引きになっていることがあるので狙い目です。

2023年1月18日水曜日

Anne Sofie von Otter / Douce France (2013)

クラシックの声楽家は、一般に30~40歳代がピークと言われ、年を取ると艶が無くなるとか、張りが無くなるとか、あるいは高音域が狭くなるとか言われたりします。確かに否定できないところですが、逆に技巧的な成熟が完成するという見方もあります。

アンナ・ゾフィー・フォン・オッターの場合は、1955年生まれなので、20歳代後半から注目され、21世紀になったばかりの時で45歳。そのあたりがピークであったことは否定できませんが、21世紀になってからクラシック以外のジャンルに進出し、レパートリーを広げつつ、年齢に合わせた活躍が続いています。

このアルバムは2枚組CDで、真正面からメロディとシャンソンに挑んだもの。タイトルは「優しいフランス」あるいは「甘美なフランス」という意味。

一枚目には印象派作曲家の歌曲(メロディ)が並びます。サン・サーンス、フォーレ、ラベル、トビッシーなど、知られた作曲家の名前が並びます。ピアノ伴奏でサポートするのは、ベンクト・フォルスベルク。80年代から、多くのアルバムで伴奏者として二人三脚でオッターを支えてきたピアニスト。

二枚目はシャンソン。つまりフランスの大衆歌曲が集められています。曲によって、アコーディオン、ヴァイオリン、ギター、金管・木管楽器などが加わり、曲想を盛り上げています。

また、選曲がにくい。「バラ色の人生」をはじめとして、日本人的にも知られた曲が多く、あまりこのジャンルに詳しくない自分でも、すっと入り込めるところが嬉しい。まさに、年齢を重ねたクラシック声楽家の、円熟の味わいがたっぷりと楽しめるアルバムです。