2023年1月18日水曜日

Anne Sofie von Otter / Douce France (2013)

クラシックの声楽家は、一般に30~40歳代がピークと言われ、年を取ると艶が無くなるとか、張りが無くなるとか、あるいは高音域が狭くなるとか言われたりします。確かに否定できないところですが、逆に技巧的な成熟が完成するという見方もあります。

アンナ・ゾフィー・フォン・オッターの場合は、1955年生まれなので、20歳代後半から注目され、21世紀になったばかりの時で45歳。そのあたりがピークであったことは否定できませんが、21世紀になってからクラシック以外のジャンルに進出し、レパートリーを広げつつ、年齢に合わせた活躍が続いています。

このアルバムは2枚組CDで、真正面からメロディとシャンソンに挑んだもの。タイトルは「優しいフランス」あるいは「甘美なフランス」という意味。

一枚目には印象派作曲家の歌曲(メロディ)が並びます。サン・サーンス、フォーレ、ラベル、トビッシーなど、知られた作曲家の名前が並びます。ピアノ伴奏でサポートするのは、ベンクト・フォルスベルク。80年代から、多くのアルバムで伴奏者として二人三脚でオッターを支えてきたピアニスト。

二枚目はシャンソン。つまりフランスの大衆歌曲が集められています。曲によって、アコーディオン、ヴァイオリン、ギター、金管・木管楽器などが加わり、曲想を盛り上げています。

また、選曲がにくい。「バラ色の人生」をはじめとして、日本人的にも知られた曲が多く、あまりこのジャンルに詳しくない自分でも、すっと入り込めるところが嬉しい。まさに、年齢を重ねたクラシック声楽家の、円熟の味わいがたっぷりと楽しめるアルバムです。