2023年1月7日土曜日

C.Abbado + A.S.von Otter + T.Quasthoff / Schubert Lieder with Orchestra

シューベルト作曲のドイツ歌曲(リート)では、フォーマットはビアノ伴奏による独唱なんですが、これをいろいろと変更したくなる人も出てくる。

例えば、ショパンと並ぶピアノの鉄人、フランツ・リストは、シューベルトの多くのリート曲をピアノ独奏用に編曲しています。これはこれで面白いのですが、原曲を知っていると、やはりピアノだけで奏でられても「ふぅ~ん」という程度であることは否めない。

人の声の雰囲気に近い楽器というと、真っ先に思いつくのはチェロ。歌手の代わりに、チェロがメロディを弾くというのはけっこうあって、歌手の歌声よりも時には温かみも感じられたりして悪くはありません。

もっと、大きな伴奏で歌を聞きたいという願望を満たしてくれたのが、我らがクラウディオ・アバドとアンネ・ゾフィー・フォン・オッターの鉄壁コンビです。ここにトーマス・クヴァストホフが参戦して作り上げたアルバムが、なかなか楽しい仕上がりになっている。

オーケストラ用に編曲したのは、ベンジャミン・ブリテン、ヨハン・ブラームス、マックス・レガー、ヘクター・ベルリオーズ、アントン・ウェバーン、フランツ・リストといった超豪華な作曲家たち。

メゾソプラノのフォン・オッターの声は、ソプラノほどキンキンするところが無いので大好きです。クヴァストホフはサリドマイド薬害による身体的障害があるにもかかわらず、大変艶のある声で活躍したバリトン歌手です。

特に聞きものは、二人の歌手で聞き比べられる「魔王(D328)」で、フォン・オッターの編曲はベルリオーズ、クヴァストホフの編曲はレガーが行っていて、伴奏のオーケストラの微妙な動きの違いが面白い。

リートの本来の楽しみ方からすると邪道と言われてしまうかもしれませんが、シューベルト自身もこれを聞いたら「そんなやり方もあったか」と喜ぶかもしれません。