ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウがどんだけすごい歌手だったかは、知れば知るほど思い知らされます。2012年に亡くなるまで、生前にほとんど聞いていなかったことが悔やまれる。
もちろん、シューベルトの歌曲を一人で集大成したことが最大の功績何だろうと思いますが、実は男声で歌えるリート(ドイツ歌曲)で、フィッシャー=ディースカウが録音を残していない物探すことはほとんど難しい。
フィッシャー=ディースカウのディコグラフィから、歌詞の内容から女声用とされる歌曲だけが省かれているのはしょうがない。しかし、そこはクラシック音楽界の老舗、ドイツ・グラモフォン・レコードはぬかりがありません。
フィッシャー=ディースカウが自分の全集から省略した、シューベルトの歌曲をちゃんとまとめ上げています。つまり、女声用歌曲、混声二重唱、重唱、合唱を集めたわけで、しかも可能な限りフィッシャー=ディースカウも参加しているというのですから素晴らしい。
CDで8枚組です。最初の3枚は、ソプラノのグンドゥラ・ヤノヴィッツで占められ、クラシックを知らない人でも耳にしたことがある有名曲が目白押しです。4枚目はソプラノのクリスタ・ルードヴィヒ。60~70年代のクラシック界を支えた美声二人がたっぷりと聞けます。
後半は、フィッシャー=ディースカウを軸に、ヤノヴィッツ、ジャネット・ベーカー、エリー・アメリング、ピーター・シュライヤーらのオールスターが入り乱れて歌い上げていくという、まぁ贅沢の極みみたいな内容です。
ただし、残念なことに現在は廃盤になっているので、中古品を探すか、それぞれ単独のアルバムをバラバラにてに入れるしかありません。自分はAmazonで5000円くらいで手に入れましたが、フィッシャー=ディースカウ単独の全集と並べるとなかなか壮観です。