2023年1月29日日曜日

Khatia Buniatishvilli / Labyrinth (2020)

若手女流三大ピアニスト、と自分が勝手に思っている一人がカティア・ブニアティシヴィリ。ソビエト圏グルジア、今はジョージアと呼ぶ国の出身で、なかなか名前が覚えにくい。他の二人、アリス紗良オット、ユジャ・ワンと比べて、圧倒的なグラマラスな美女。


音楽家なんだから、容姿の事をとやかく言うのは無粋ですし、いまどきだとセクハラになってしまいますが、演奏中の動画などを見ると、本人は明らかにそこんとこを意識したタイトなドレス姿を披露しているので、評価ポイントの一部に入って来るのはいたしかたがない。

プーチンがウクライナ侵攻するかなり前から、プーチンの事が大嫌いなのは有名で、ロシアでは演奏はしないし、プーチン推しの演奏家との共演は拒否というから筋金入りです。

3人の中では一番遅い2010年にSony Classicalからメジャー・デヴュー。しかも、アリスと同じようにリスト・アルバムで、こちらは難曲ロ短調ソナタで勝負してきたのは恐れ入ります。当然、テクニック的には申し分ないわけですが、独自の解釈が強く曲に深く入り込んだ演奏が持ち味と言えそうです。

だからと言ってソロイスト向けというわけではなく、オーケストラとの共演などでの協奏曲での協調性は抜群ですし、ソロ・パートでの「らしさ」みたいな表現力は好感が持てます。

アルバムは、ソロ物と協奏曲物をバランスよく出していますが、間に若手バイオリンの旗手ルノー・カピュソン、ベテラン・バイオリンのギドン・クレメールらとの室内楽も挟み、順調な活躍ぶりと言えそうです。

目下のところ、最新作は2020年の「ラビリンス(迷宮)」ですが、最近のアーティストはクラシックと言えど、アルバムとしてのコンセプトをしっかり持っている。昔のように安易に作曲家や曲名だけのタイトルを付けることは少なくなりました。

このアルバムは、モリコーネ、サティ、ショパン、リゲティ、バッハ、ラフマニノフ・・・などなど、国も年代も違う作曲家のピアノ小品を集めたもので、一見ごちゃごちゃのように感じますが、聞いてみると全体の一体感があり、違和感はありません。かっこよく言えば、時空を超えて散歩するかのような音楽の迷宮に入り込んでしまったような楽しさです。

ベテランの過去の名演を楽しむのもいいですが、このような若手の新しいクラシック音楽へのアプローチは、音楽の命を未来につなぐものとして必要なことだろうと思います。