2007年8月2日木曜日

リウマチ診療で思うこと

間節リウマチの治療では、現在メソトレキセートという薬が主役として使われています。これは体の中で細胞が増えていく際の必要な、遺伝子に関係した核酸という物質を阻害する薬ですので、重大な副作用が生じる可能性があります。自分たち整形外科医にとっては、骨肉腫という骨の悪性腫瘍で使われる抗がん剤としてなじみがあります。全国で発生する骨肉腫は年間数百名で、各大学病院クラスでは平均すると年間数人の患者しかいないことになり、抗がん剤の治療を行ったことがある医者はごくわずかということになります。
幸い自分は大学で、何人かの骨肉腫の治療に携わる事ができたので、はじめてメソトレキセートがリウマチに効くらしいという話を聞いたときには、「そんなことあるの?」という気持ちでした。なぜなら、骨肉腫の治療では、使用して放っておいたら患者さんは1週間以内に死んでしまうような薬ですから、そんなしんどい治療を簡単にできないだろうと思ったのです。しかし、実際に使われる量は1/1000程度と聞いて、今度は逆に「それっぽっちで効くの?」と思いました。
それから何年かして、1999年にメソトレキセートが関節リウマチ薬として発売され、自分も使い始めました。さらにリウマチセンターへ移ったため、まさにその効果をまじまじと実感することになりました。比較的初期に行うことが多い膝の滑膜切除術という手術が激減したのです。と、同時に副作用についても非常に問題になることも知りました。現在は、使用量を増やすほど効果が出ることがわかっているので、厚生労働省が認可した用量を超えた使い方を推奨する声もあちこちから聞こえてきます。しかし、「主作用が強まる」=「副作用が強まる」であることは、間違いなく、リスクの増大についても十分に考えなければいけないと考えられます。実際副作用による死亡例は、何度かメディアで報道されています。特に自分のような開業医にとっては、重大な副作用が出たとき迅速な対応がどこまで取れるかという問題があり、安易に決められた用量を超えて使うことはなかなかできません。
現在では、生物学的製剤という新しいタイプの薬が出てきて、かなりの臨床効果が得られることが証明されています。したがって、決められた範囲でのメソトレキセートの効果が不十分であれば、生物学的製剤への移行を則したほうが、むしろ安全で確実に効果が上がるのではないかと考えています。ただ、それには生物学的製剤の値段があまりに高いことが問題になります。最近の医療費抑制政策の関係で、高額療養費援助の制度も使用できなくなりました。普通に使うと、他の薬や検査も含めて大多数の患者さんは月に5万円程度の出費を余儀なくされます。リウマチは完治することができない「難病」でありながら、国で決められた「難病」の指定からは漏れています。新しく議員になった方の中で、ちょっとでいいですからこのことに目を向けてくれないでしょうか。切にお願いいたします。