2007年8月20日月曜日

医者として患者さんの悩みにどう答えるか

今日は、悩みをかかえるNさんからのメールを紹介します(以下、一部省略)。
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私も2度整形の門を叩きましたが、今では「もっとしっかり悪くなってからにしよう」と思うことも。症状が出ていないときには行きづらく、万年肩こりですけれど尋常な硬さではないので頭痛も耐えません。
直るものなのか、諦めるべきものなのか、掛かるに掛かれず悩んでいる患者というのは結構いるものなんです・・・私のよう生活に支障ないように見えると、 「肩ぐらいみんな凝ってるから」といわれればその通りなのでイコール「医者にかかるほどじゃない」ということになってしまいます。そういうのを専門でやられているのは医療機関ではないのでしょうか?あるとすれば何科になるのでしょうか?
今日もタウンニュースの「つら~い肩こり・五十肩 もう我慢しないで」という治療院の広告に目がいってしまう悲しい状況でした。
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痛みは主観的な症状で、他人にはそのつらさはわかりません。だから、自分たちは「患者さんはゼロの痛みは訴えない」というところから出発しなければなりません。確かに痛みの感じ方は人それぞれ、中には我慢強い人もいれば、大げさな人もいます。でも、痛みは「気のせい」というような解決は、精神科にはあるかもしれませんが、自分たちには原則としてありません。医者の中には自分の理解の範囲を超えると、そのような解決に答えを求めるものがいます。それは自分の知らないこと、わからないことを自覚していないか、あるいは知らないことを明らかにできない者なんだと思います。前にも書きましたが、そのようなことを含めて自分の提供できる医療の限界を知っていることが、様々な医療事故を防ぐ上で大切なことなんでしょうね。

肩こりは病気ではありません。症状です。つまり、肩こりになるということは、何らかの原因となる病気があるということです。首を支えている筋肉への負担が多すぎる原因には、頚椎(首の背骨)になんらかの問題がある場合があります。稀には、筋肉そのものの病気もあるかもしれません。ただし、絶対的な過負荷の状態がある場合には、明らかな病的な状態が無くても筋肉の慢性的な疲労状態になってしまうでしょう。その場合には、医者としてできることは、負荷を軽減するための生活のアドバイスをすることです。原因を取り除くことが、なによりも大切だからです。

まずは、姿勢をよくすることです。特にパソコンを仕事で利用する人は、肩こりになりやすいので、モニターをなるべく高くして目線が水平になるようにしましょう。メガねコンタクトを使用している人は、度があっているかチェックしてください。椅子には深く座って、背もたれにしっかりと背中をつけましょう。
椅子は低めの方がいいと思います。肩を後ろにひいて、胸を張るようにしましょう。

これだけ暑さがつづいていると、さすがにエアコン無しではいられません。風をまともに肩から首すじにあてていませんか? 冷やすと血管が収縮して血流が悪くなりますから注意してください。

寝るときの枕も悩みの種です。枕コレクターになってませんか? まっすぐの良い姿勢の時には、床と頭の距離は意外とありません。せいぜい数cmです。頭の重みで潰れたときに数cmの厚みになる枕を使うことをおすすめします。ただし、椎間板ヘルニアや老化的な変化が強い場合には、変わってくるので注意してください。

治療院でも整骨院でも、鍼灸でも、マッサージでも、もちろん整形外科でも、少しでも楽だと思う治療が見つかったら、続けてみてよいと思います。ただし、それぞれのところでしかできない方法についての話です。それは、ほとんどの場合対症治療です。もう一度いいますが、原因治療はOver Useを除去することです。

負担をかけていないのに肩こりがひどい場合は、頚椎の状態をきちんと調べてもらうことをお勧めします。原因がはっきりしない場合もあるかもしれませんが、あきらめるのはそれからでも遅くはありません。また、あきらめるのではなく、うまく付き合っていくという風に考えたいものです。
例によって、まとまりのない文章で申し訳ありません。