2007年10月4日木曜日

テニスにまつわる思索


今となっては誰も信じてくれないとは思いますが、自分は大学の硬式テニス部の主将だったのです。高校まではスポーツといえば、剣道くらいしかやったことがなく、大学に入ってからはあの汗臭さはもういやだ、と思っていました。大学生といえば華麗なテニスでしょう、というミーハーな気持ちから入部したのでありました。

しかし、間違っていました。それは同好会の空気であり、我がテニス部は体育会系硬派庭球部であったのです。朝練、午後練は当たり前。時には本学のほんちゃんの体育会と合同練習というメニューもありました。合宿では「振り回し」という、あっちこっちに球出しされるのを、足をふらつかせながらひたすら拾いに行く。不始末があると学年全員正座をして反省。

練習が終わると、重たいローラーを仲間で引っ張ってコート整備。当時は、石川ひとみの「まちぶせ」が流行っていて、夕闇のコートでみんなで歌いながらの整備は、まさに「青春」でした。とは、いっても、全員が学年を超えて仲が良く、特にレギュラーに恵まれなかった自分たちの学年も、誰も最後までやめませんでした。きびしいようで、先輩も「飴と鞭」をよく心得ていて、コートの外ではとても面倒見のいい方々でした。


当時のラケットはウッドが主流で、アルミシャフトやグラスファイバーが出始めた頃です。ボルグはドネー、マッケンローはウィルソンウッド、コナーズはウィルソンアルミ、キング夫人とナブラチロアはヨネックス、エバートはウィルソン。スイートスポットという言葉があって、ラケットに張ったガットの中心部、直径10cm程度の範囲にボールを当てないと、ちゃんと返せない。そのためには、ボールが飛んでくる方向に即座に反応して体を平行にしてテイクバック、膝を曲げて体制を作ったら、手首を固定して体のちょっと前でボールをとらえ、膝の屈伸でドライブをかけ、そのままラケットを前方に投げ捨てるようにフォロースルー。

今となってはデカラケが当たり前で、どこに当たってもボールは返る。オープンスタンスでもOK。手首は捻りたいだけ捻ってもOK。だんだんテニスのスタイルも変わってしまいました。でも、基本というものを、もう一度考えてみる必要があります。スポーツでいう基本というのは、体に負担をかけずに最大の効果を出すやり方なのです。これは長い時間の中で、少しずつ精錬されてきた結果、つまり先人の知恵の結晶ともいえます。どんなスポーツでも、ケガをしたらつまりません。そのへんを考えて欲しいと、整形外科医になった今の自分は思っています。