うちのクリニックの隣には水戸黄門のようなお医者さんがいます(遠山の金さんが似合うという意見もあります)。
どこかの大学の教授みたいなひとではありませんが、その道で知らない人はいないという有名人です。都筑区、青葉区、さらには緑区をジョギングしてまわり、おいしいお店、あたらしいクリニックビルなどの皆に役立つ情報を集めて発信しています。インフルエンザの情報も、いち早くブログに記載して、さらに隣近所の予防接種の料金の方がが安いよ、と宣伝までしてくれます。
もちろん同じクリニックビルに入居しているわけですから、仲良くするのは当たり前ですが、医師会に入っているメリットの一つでもあります。医師会とは何? 医師会に入らなくても開業できるじゃない、医師会に入るとなんかいいことあるの? などいろいろ言われています。同じ標榜科の場合はクリニック同士はライバル関係にあるとも言えますが、共通の情報の交換は大変役に立ちます。まして、違う科の間では、症状によって連携を取ることがたいへん重要です。医師会に関係していれば、これが非常にスムースに運びます。
都筑区は新しい地下鉄路線の開業を間近に控えて、医療ビルが雨後の筍状態となっています。最近、医師会としても、なんでも入会希望者を認め続けていいのか、という声が上がり始めました。というのも、地域に分散していればいいのですが、新しいクリニックの計画が特定のエリアに集中しているため、直接既存クリニックの経営に影響するからです。ライバルというよりは、むしろ完全に敵対するような状況になりつつあります。
たまたま、医師会の仕事の関係で、そのあたりのデータを見る機会がありました。確かに、大変危機的な状況と言わざるえません。診療報酬は年々引き下げられ、もうどこも一杯一杯で経営しています。当然クリニックが増えれば患者さんの取り合いになるわけで、いくら都筑区が人口増加地域といっても、もともと住民の年齢が若いため受療率が極端に低く患者人口は大変少ないので、現状でも限界を超えているといっていい状態です。
患者さんの側から見るとどうでしょうか。お店が増えて、買い物がしやすくなるからと単純に喜んでいるわけにはいきません。実際、自由競争の一般のお店ですが、有名店でさえ都筑区では経営がなりたたず、進出・撤退が頻繁に行われています。
医療は「値引き」は許されていません(できても、すでに保険医療の中では赤字ぎりぎり)。現状では自費診療はごく限られたものしか許されていません。広告も原則としてほとんどすることができません。もちろん時代を先読みする経営者としての才覚も関係しますが、結局、違うのは医者の技量だけです。
ということは、自分の医者としての経験と知識、そして社会に還元するための技術を、絶えずアップデートしていくしかありません。医師会での医者同士の関係も、それらの技術の一つと考えてもいいかもしれません。