2007年11月25日日曜日

リウマチ・クリニック


関節リウマチの治療戦略が、21世紀に入って大きく変化してきていることはすでに書いてきましたが、特に生物学的製剤の登場が、その変化を推し進めている原動力であることはまちがいありません。

2003年のインフリキシマブ(レミケード)、2004年のエタネルセプト(エンブレル)の登場が、リウマチ患者さんにとって福音となっているのです。さらに複数の生物学的製剤が、続々と開発されており、この状況は今後5年間は変わることはないと思われます。

生物学的製剤の威力は、時に「すさまじい」ものがあります。最近導入した方も炎症の程度がCRPという指標で見ると、大火事状態の10近くからくすぶっている程度の0点台までさがりました。MMP3という指標も、びっくり仰天の700からこれならokの100台へ。もちろん、すべての方がこううまくいくわけではありません。

また、診断する上でも、今年から抗CCP抗体検査が保険適応となり、より精度があがったといえます。どうしても医師の経験的な部分がふくらみやすい診断基準による方法に、少しでも客観的なデータが加わることは、リスクの高いクスリを使用する根拠になるのです。

実際、リウマチ治療の変化に伴い、医療機関の対応も変化を余儀なくされています。痛み止め感覚で飲み薬を処方することは許されません。厳格な副作用のモニター体制が必須であり、幅広い知識が求められます。自分のような整形外科開業医も、自分だけで何とかするということでは不十分であると云えます。

女子医リウマチセンターでの外来継続は、そういう意味で自分にとって大変重要な意味があります。外来は手の外科専門として行っていますが、月に1回は大学に行って、医局をうろうろすることができることによって、新しい情報に接することができます。たまに偉い先生方と気楽に雑談できることも、捨てがたい特権といえます。難しい患者さんについては相談もできます。

また、同じリウマチセンター出身の横浜市内開業の内科の先生とは、お互いに不得意なところを補うことをしていますし、来年あたりからは定期的な勉強会の計画をしています。さらに近くの病院でも外来を続けています。おかげで、入院の必要が出たときも無理を聞いて貰えるし、手術をしたいときも受け入れてもらえます。

さしあたって、次の課題は「高価な生物学的製剤をやめることはできるか?」ということです。どういう状態になったら、減量・中止ができるかは、新しい治療法であるため、まだわかっていません。やっと、いくつかの報告が出始めている段階です。内服薬の治療では、長期間の寛解状態(症状がなくなった状態、事実上治癒した状態)が得られていても、中止することで再燃してくることは多くの患者さんで経験します。製薬会社にも、量の少ない剤型などのバリエーションが求められています。