2008年11月24日月曜日

Alan Weiss / Alkan Piano Works

クラシック・ピアノの話題をもう一つ。

ピアノの歴史というのも興味深いのですが、現在のピアノの形ができたのはベートーヴェンの時代からです。

ちょっと前のモーツァルトは、まだバッハの頃のチェンバロ(弦をひっかく)の流れで、音の強弱についてはあまり考えていない。ということは、当然音符の組み合わせで曲を作っていくわけです。

ベートーヴェンはピアノの進歩に合わせて、弦を叩くことで音量や音質を変えられることを利用して、ソナタの中で多くの実験的手法を取り入れていくわけです。それに伴って、当然和音を多用したリリシズムがピアノの本流となっていくわけです。

その頂点を極めたのが「ピアノ」の詩人」ショパン(1810-1849)ということになるんでしょうかね。それに対して、演奏方法が複雑化していくピアノのテクニカルな面での頂点に立つのが「ピアノの魔術師」リスト(1811-1886)です。

高度な技法を追求するという方向性が生まれてくることは、どの時代どんな物にも共通のことですが、人間の無限の感性に比べると限界が必ずあるという点を忘れてはいけないと思います。リストも晩年は宗教家に転じ、精神的な安息を求める方向に向かいました。

そして、もう一人一般にはあまり有名ではありませんが、リストよりもさらに技巧に走った作曲家がアルカン(1833-1888)です。

友人のショパンが若くして亡くなった後は、引きこもって作曲活動をしたと言われています。当時の感覚からはかなり過激なピアノ曲を作っていますが、テクニックのためのピアノ曲という評価は、あながちまちがいではありません。

しかし、ピアノでできることを世の中に知らしめた天才の一人として、リストにも影響を及ぼしたとしてピアノ史の中で忘れてはいけない人物の一人と言えそうです(詳細な説明は森下唯氏のHPをご覧ください)。

現在は、長調による12の練習曲、短調による12の練習曲が最も有名で、特にその中に含まれているピアノ独奏のための協奏曲、ピアノ独奏のための交響曲などは比較的録音があります。

最近は、リストやアルカンの超絶技巧曲を多数録音しているピアニストとしてはアムランオズボーンがいます。この二人の今後の展開には興味があります。作曲家と同じで、演奏家も技巧だけでは限界が見えてしまいますから、だんだんスタイルは変わっていくだろうと思います。

ただ、どちらもCDが高いので今回お勧めするのがこちらのアラン・ワイス、Brilliantの激安盤です。CD2枚組で主要作品が網羅されているので、とりあえずアルカンに触れてみるにはうってつけです。特に、実際にピアノを弾く方は一度はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。