2008年11月23日日曜日

Jorge Bolet / Liszt Piano Works

フランツ・リストといえば、ロマンのショパンに対して技巧の人のように思われていますが、「巡礼の年」のように情緒的な傑作も作曲しているわけです。

もちろん、ピアニストにとっては超絶と呼ばれる究極のテクニックを要求されるわけですから、並大抵のことではありません。聴くだけにしておいてよかったよ、ホント。

古今、リスト弾きと呼ばれる名ピアニストが多数いるわけですが、意外と全集というもので定番となっている録音が見あたらないんですよね。

ショパンだったら、ルビンシュタインかアシュケナージとなります。シューベルトならケンプ。モーツァルトは内田光子、リリー・クラウスなどなど。もちろん、音楽は個人の好みですから普遍的な名盤というのは存在しないわけです。

なんで、リストの全集が無いかというと・・・たぶん、あまりの膨大な量のためではないでしょうか。レスリー・ハワードという人がこれに挑んでいますが、なんとCDで100枚。完成させた努力はすごいと思いますが、何もそこまでがんばらなくても、と思ってしまいます。

でもって、結局有名どころをばらばらに探していくことになるわけですが、ハワードさんからはパガニーニの練習曲だけ選びました。「巡礼の年」は以前書いたようにベルマン。ブレンデルのものも人気ですが、全曲録音ではありません。超絶技巧練習曲もピアノがきしんでいるかのようなベルマンを推したいと思います。アラウもリスト系のピアニストです。

ハンガリー狂詩曲はシフラなどが有名のようですが、全曲録音と値段の安さでピサロという方の物になりました。フジ子ヘミングもリスト弾きとして有名で、「ラ・カンバネラ」の演奏は自分もクラシック音楽に再び耳を傾けさせるきっかけとなったものですが、録音がバラバラでリストを集めるにはむきません。

そこで、ボレットの登場です。主要な演奏を網羅したBOX SETがCD9枚組でちょうど良い。ちょうど、HMVのブライスダウンで買い求めやすい価格になったので手に入れました。

バカテクを必要とするリストの難曲を、音楽的に聴かせることができる数少ないピアニストと言われています。確かにその通りです。巡礼のベルマンは大変素晴らしいのですが、超絶のベルマンはすごいだけという感じがしてしまいます。

ボレットの超絶は、超絶ですがフレーズがしっかりしていて、ちゃんと音楽になっているように思います。逆に、巡礼が全曲でないのが残念。シューベルトの歌曲もボイスとハーモニーのバランスが絶妙で、聞き入ってしまいました。愛の夢などの有名な小品も素晴らしい。

あと、多少聴き足りないものがありますが、これでたいていの部分は補えるというのはありがたいセットです。