2008年11月13日木曜日

手の悩みは深いんですよ

今日は大学の外来。自分は、関節リウマチ患者さんの手の悩みについての専門の外来をやっています。

2年近く前に相談にきた若い女性。手の変形について相談をうけました。一部は手術で多少は何とかかりますが、無理なところもある。こういうとき、あまり希望を持たせるような話はしません。

期待が大きくなると、どうしても不満が残りやすいのです。ですから、かなり控えめに手術で直せることについての話をします。

結局、手術は希望されず、他の病院で相談して手術を受けたのです。結果は・・・

術後のトラブルに見まわれ、けして良好な結果が得られませんでした。それで、また自分の外来に相談に戻ってきました。

これは、医者としてはつらい。自分が手術をしたのであれば、結果が良くても悪くてもいろいろな説明もできるし、次の作戦も組み立てることができます。

自分の考えていた方針とは違う手術を、他の先生がやったことですから、なんで良い結果が出ないかという話はなかなか患者さんを納得できるような形ではしずらいのです。

でも、実際に困っているわけですから、何とかしなければなりません。少なくとも、再手術をできるような状態ではないことは確か。となると、作業療法士の先生と相談しながら、リハビリテーションしかありません。

それから、1年。現実はなかなか難しくて、結局改善させることはできません。さすがに、これ以上同じようにリハビリテーションを続けることには意味がないと判断するしかありません。

直接に問題を解決することではなく、今できることを伸ばしていくことで、手の機能を増やしていくほうが実質的に効果が高いのです。手は「慣れ」ということが起こるので、障害があっても生活の不便さとは比例しません。

厳しい話です。そんな話をするのも、けっこう残酷な感じがしますが、いつまでも一つのことにこだわり続けて、全体を見失ってはもったいないのです。

泣かせてしまいました。申し訳ありません。

こんなことを外来で話せるのも、後をフォローしてくれるリハビリテーションのスタッフがいるからなのです。今までの問題は横において、今できないこと、できるようになりたいことをしっかり聞いてくれました。

ネガティブからポジフィブへ、考え方を変えるのは大変ですが、自分にとっても勉強になった患者さんです。また、経過を見させてくださいね。