今年の春頃から、はまっているベートーヴェンのピアノ・ソナタ。
だいたい全32曲を連続で聴くと、半日はかかってしまいます。ですから、当直バイトをしていると、流しっばなしにしていて一巡するわけです。クリニックや家ではなかなか集中して聴くことはできません。
最初に購入したのはケンプ(新録)。次がアラウ(旧録)。そしてグルダとギレリス。そしてニコラーエワとグールドまではきました。ギレリスとグールドは残念ながら数曲を残して全集となっていません。
ケンプはテクニックについてよく批判されるようですが、まさにお手本のような気持ちの入った演奏。
アラウは男性的な力強さを感じます。
グルダは軽すぎると言われますが、一気に駆け抜けていく爽快感は捨てがたい。
完成度の高さではギレリスが一番。
女性らしからぬパワーがほとばしるのがニコラーエワ。
常識にとらわれずオリジナルの世界が楽しめるグールド。
これ以外にアシュケナージとバレンボイムも何曲か聴きましたが、どちらも甘すぎて好きになれません。
あと絶対に聴きたいのが、定番中の定番である、バックハウスと理論派の第一人者ブレンデルです。しかし、その前にもう一つ聴きたいと思っていたのがこれ。リルです。
John Lillはイギリスのピアニストで、日本ではあまり有名ではありませんが、ベートーヴェン、プロコフィエフ、ラフマニノフといったところではあちらでは大変に評価されているようです。
ケンプの直弟子で、質実剛健な演奏に定評があります。HMVの書き込みを見ていても、一度は聴きたいと思っていました。
しかし、Brilliantの廉価盤はいつでも注文できるようですが、音質の点が不評で、オリジナルのASV盤が推薦されています。ところが、すぐに入手困難になってしまい購入しそこねました。
最近また復活していたので注文したところ、すぐに入荷してきました。そこで、聴いてみると・・・うーん、確かにHMVの書き込みは本当に参考になります。
全体的に、やや遅めのテンポですが、一つ一つの音の粒立ちは誰よりも素晴らしい。まさに重厚な響きとメロディアスな流れが一体となっていて、完成度の高さはおそらく一、二を争うのではないでしょうか。
自分は音質の面を重視する聴き方なので、歴史的名演といわれているものでも古い音質のものは興味がありません。ですから、シュナーベルなどを聴く気は起こりませんし、評判の良いケンプの旧録音も度外視しています。
そういう勝手な枠内で、ギレリスとこのリルは最高五つ星としたいと思います。