2010年4月18日日曜日

関節リウマチの専門家

関節リウマチの戦略は21世紀になって、ものすごい勢いで変わったと言っても過言ではありません。はっきり言って、風邪のようにとりあえず薬を出しておけばというような病気ではありません。20世紀でも、本来は簡単に済ませていい物ではなかったのですが、その認識が不足していたことは否めないわけで、これには自分を含めた医者の責任が大きい。

自分も昔は外傷中心の普通の整形外科医でしたから、関節リウマチに対してもそれほど真剣に対峙していなかったと思います。リウマチと言えば、決まった薬を出しておけばいいと思っていましたし、ましてや薬の副作用なんてほとんど考えもしなかったので、血液検査も半年以上行わなかった。

検査結果でリウマチ因子が陽性でしたら、それだけで「あなたはリウマチです」と言ってしまう医者が今でも後を絶ちません。もっとも数十年前は年を取って関節が痛いというとロイマチス(リウマチ)と普通に呼んでいた時代があり、それが今でもすぐにでもリウマチが誰にでも起こるような錯覚を与えているのかもしれません。

リウマチは内科系の医者と整形外科系の医者が診ているわけですが、これはどんなに効果的な治療を行ってもなんらかの手術が必要となることが多かったからです。関節が痛いと、患者さんはまず整形外科を受診することが多く、そして最終的に変形による機能傷害が強くなってくると手術を考える。

しかし、治療の進歩によって外科的な治療を必要とする状況は激減しているのです。何年か後には整形外科の出る幕はなくなるかもしれません。副作用で死亡するかもしれない薬を、使いこなすことは容易ではありません。

そのためには絶え間ない知識のアップデートと経験の積み重ねが必要です。特に初期の症状については、この病気くらい一人一人違うものはあまりないと言ってもいいくらい様々です。昨年改定されたアメリカリウマチ学会の基準は、経験のある医者には大変意味のある物になったと考えられている一方、専門外の医者には非リウマチ患者を陽性に判定してしまう可能性が高くなったと危惧されています。

少なくとも関節リウマチの専門家であると表明するからには、相当な覚悟と努力を続けていくことが必要です。難しいのは、そういう専門的な部分を一般の医者に広げていく努力をすべきなのか、それとも一般の医者が手を出さないように注意していくのかというところです。

実際には、医者の免許というのはオール・マイティであって、自分も明日から産婦人科ですと名乗っても法的には問題はありません。その辺をクリアにするために、各科学会で専門医制度を導入しているわけですが、特に強制力があるわけではないので一般の方へ十分に浸透しているとは言い難い。国の政策でも、専門領域の医者と全てを診れる医者のどっちを多くしたいのかよくわからないという状況があります。

ですから、とりあえず現状で自分にできることは、自分の診療技術の向上はもちろんのことですが、近くの内科系のリウマチ専門医の先生と協力してそれぞれの不足している部分をしっかりと補填していくこと。そして、入院が必要になったときの病院を確保し続けること。つまり、専門家同士の診診連携と病診連携を充実させることにつきます。