関節リウマチに限らず、医学の限界というものは確実にあるわけです。21世紀のリウマチ治療は、生物学的製剤によって急激な進歩をとげ、時にほぼ治ったといえる寛解という状態も珍しくなくなったわけですが、やはり治癒とは違うのです。
有名大学教授のような方でも、リウマチは治せるみたいなことを口にしたり、「みるみる治る」みたいなタイトルをつけた本を出す医者もいたりして、調子に乗りすぎじゃないかと思えない事もない。
もちろん目標として発病したときには、完全に病気が消える - 治癒する - ことが目標で無ければなりません。さらに、病気の原因が解明され、予防する事ができれば完全制圧となりますが、さすがにそこまでいくとしても、相当先の話でしょう。
現状ではメソトレキセートを中心とした内服薬による治療では、寛解になる患者さんはそう多くはありません。基本的には、従来の「一生治療を続ける」必要があります。
コントロールが良好で、薬を減量するとほぼ間違いなく悪化してくる事が多い。寛解状態までいっても、治療を中断すればすぐに再燃してくることが普通です。
リウマチ因子(リウマチ反応)と呼ばれる検査項目があり、あまり役に立たないとして検査をしない施設もあるのですが、リウマチ因子は現在の状態を反映していないことは確かですが、病気の勢いを見て行くには意味があります。
内服薬を減らすと、ほとんどの場合リウマチ因子はしだいに上昇してきて、どこかで症状も悪化してくるものです。それまでに数ヶ月程度、そして薬の量を増やして落ち着くまでに数ヶ月、あわせて半年以上、不安定な時期ができると変形につながる骨の変化が出る可能性が否定できません。
同じことは、強力な生物学的製剤でも言えます。生物学的製剤を使うと、半数近い方が寛解、あるいはひじょうに落ち着いた状態になります。しかし、治療を中断して、そのまま寛解が続く方は、どのくらいいるのでしょうか。
現実の治療の中では、まだデータがそれほどないので経験的な話しかできませんが、再燃してくるほうが多いのではないかという印象があります。根本的な原因を除去しているわけではないので、当然といえば当然なのかもしれません。
最近は、患者さんも「リウマチは治る」という話を聞いて知っていることが多くなってきました。しかし、実際にはそんなに簡単な話ではなく、いろいろな条件のもとで限られた方に寛解が可能になっているというところ。
患者さんに多くの期待をさせすぎることは、かえってマイナスの部分もあるので、リウマチ治療を牽引する偉い先生方は言葉の使い方などにもう少し慎重さが欲しい感じがします。
リウマチが治ると言う事が、現実なのか幻想なのか、まだまだ答えは出ていません。しかし、確実に現実になる方向に歩んでいることは間違いありません。まだまだ、進歩を止めてはいけないところですね。