キリストは十字架に架けられて、絶命するまでに7つの言葉を言ったということが福音書に記されています。キリストの遺言とでもいうべきこれらの言葉は、聖金曜日のミサのなかでもしばしば朗読されたようです。
これらの言葉は、
「父よ、彼らを赦して下さい。なぜなら、彼らは何をしているのかわからないからです。」
「アーメン、あなたに言います。あなたは今日私と共にパラダイスにいます」
「ギュナイ、そこにあなたの子がいます。そこに、あなたの母が」
「わが神、わが神、どうして私を見捨てられたのですか」
「私は渇いている」
「終わった」
「父よ、私の霊をあなたの手にまかせます」
の7つということになっています。
これらをモチーフにした音楽も、何人かの作曲家によって作られていますが、やはり最も有名なのがハイドンによるものでしょう。
1786年、スペインのカディス大聖堂からの依頼によって、ハイドンは司祭がこれらの言葉を朗読したあとの暝想の時間に演奏する曲を作る事になります。当初、管弦楽版がつくられたのですが、ハイドンは自ら相当気に入ったらしい。
1787年には、自ら弦楽四重奏版を発表しました。さらに1796年には、歌詞をつけてオライトリア版が作られ、ついにはピアノ独奏版の監修までしてしまうところまでいきます。
面白いのは、ラテン語による7つの言葉の朗読が、それぞれの曲の前に収録されています。ちょうど、実際の式典での進行をイメージできる形。朗読はそれほど長くないので、演奏の流れが途切れるほどではありません。
十字架に磔になった神の子が、いろいろな不合理に不満をもちつつも、死後を託し、最後には自分の存在に満足し、神のもとに委ねるまで気持ちを、しっかりと詰めきった音楽として、受難曲とともにしっかりと聴いておきたいものです。