関節リウマチの診断の難しさは、これがあったらは絶対というポイントがほとんどないというところ。
早いほど特徴が少ないのは他の病気も変わりありませんが、早期発見・早期治療という話が広まったことで、ほんの数日前からの手指の痛みで心配して来院される方が多くなりました。
発症して数日とかでは、痛み以外は、外見的には何も特徴的なものは無いし、必ずどの関節から始まると決まっているわけでもない。後から振り返ってみると、あれもリウマチだった、これもリウマチだったみたいなことがよくあるものです。
血液検査をしても、リウマチ因子と呼ばれる検査項目があるものの、ゼロでもリウマチの方は珍しくない。より診断的に意義のある抗CCP抗体でも、検出されないから大丈夫とはいいきれないのです。
一方、リウマチと言われてずっと治療をしていたが、あまり痛みも変わらず、心配になって他の病院を受診したくなったという方もしばしばいます。
痛みが出て、あるいは治療を開始して数ヶ月くらいという場合は、まだ判断は難しい。リウマチではありませんとも言えませんし、リウマチだとしても治療効果の判定をするには微妙なところ。
半年以上たっていれば、リウマチではない可能性はかなり高くなりそうですし、少なくとも今の治療を漫然と続けていることはお勧めできません。
さすがに1年たつとなると、症状も変わらず、外見的な変形などが無いのであればリウマチという診断は誤りだろうと考えたくなります。
リウマチを発症したのであれば、最初の数ヶ月は悪化傾向にあるのはしょうがない。未治療の場合は、そのあたりから少しずつ特徴的な外見が見え始め、1年から2年くらいの間でもっとも変形が進む事がわかっています。
リウマチだけど、治療法が不十分ですと説明するのはそれほど難しくはありません。しかし、リウマチと言われていた方に、リウマチではないと話すのはかなり神経を使う。
病気があるほうが困るのは当たり前ですが、痛みなどの症状の原因がわからない方が不安が大きかったりするものです。リウマチではないとするならば、痛みの原因もあわせて合理的に説明できないといけません。
実際、50歳代以上になってくると、関節の加齢性変化がまったく無いということはなく、何らかの痛みを感じる機会は増えてくるものです。大多数の痛みはそういうものであるので、レントゲン検査などでの変化を慎重に検討する必要があります。
リウマチを専門にしている医師の仕事は、やはり一番重要なのは診断。まず、リウマチなのか、違うのか、そして違うならば何故痛むのか。ここをしっかり判断できる力を勉強と経験から培う事を忘れてはいけません。
これからリウマチ医を目指そうとする若い医師に、是非お願いしたい事は、最新の治療のことばかりに注目せず、基本となる診断学を身に付けていただきたいということです。もうじき日本リウマチ学会もありますので、少しでも気に留めてもらえればと考えています。