2017年10月28日土曜日

古事記(5) 其八俣遠呂智、信如言來


高天原を追放されたスサノオは、お腹が減って食べ物の神である大気津比売神(オオゲツヒメノカミ)のもとに立ち寄ります。

オオゲツヒメは、自分の鼻、口、尻から食べ物を出して盛り付けるという離れ業。ところがスサノオは汚物を食わせる気かと怒って、オオゲツヒメを殺してしまいます。

死んだオオゲツヒメの頭から蚕、目から稲穂、耳から粟、鼻から小豆、陰部から麦、尻から大豆が生まれます。

別天つ神の一人、最初に登場し消えていた神産巣日神(カミムスビノカミ)が突然再登場し、これらを集めて作物の種としました。

因みに、日本書紀では、月読命が主役の話に変わります。アマテラスに保食神(ウケモチノカミ)の様子を見てくるように言われたツクヨノは、保食神が口から食べ物を出したことで怒って殺してしまう。

アマテラスはそれを聞いて、ツクヨノと兄弟の縁を切ってしまったため、昼と夜は別々にやってくることになったという・・・つ

一方死んだ保食神の頭から牛馬、額から粟、おでこに蚕、目から稗、腹から稲、陰部から麦・大豆・小豆が生まれましたとさ。

やはり、本来イザナキから生まれるのは対称的なアマテラスとツクヨノだけでよかったのかもしれません。そこに決定的な兄弟喧嘩が発生し、ツクヨノが敗者となり歴史から消えるのですが、全面的に悪者にするわけにいかないので、スサノオを表裏一体的な存在として登場させた・・・なんて、勝手な妄想なんですけどね。

さて、出雲国斐伊川にたどり着いたスサノオでしたが、国つ神の大山津見神(オオヤマツミノカミ)のこどもである足名椎(あしなづち)と妻の手名椎(てなづち)、そして娘の櫛名田比売(くしなだひめ)と出会います。

泣いている家族に、クシナダに一目ぼれしてしまったスサノオが理由を尋ねると、「毎年、8つの首、8つの尾を持つ八俣遠呂智(やまたのおろち)がやってきて娘を食べてしまうので、クシナダが最後の一人。今年ももうじきやって来る」という話。

そこで、クシナダとの結婚を条件にスサノオは遠呂智退治を引き受けます。スサノオは、8つの大きな器に強い酒をたっぷり満たし、クシナダを櫛に変えて自分の頭に差して待ちました。

そこへ八俣遠呂智がやってきた・・・というのが今日のタイトル。遠呂智は器にそれぞれの首を突っ込んで酒を飲むと酔って寝込んでしまいます。スサノオはすかさず、遠呂智を切り刻んで退治すると、尾の中から立派な草那芸(くさなぎ)の太刀が出てきました。

スサノオは結婚の報告をアマテラスするため、高天原にちょっとだけ戻ったときにこの太刀を献上しました。そのあと、出雲の地ですがすがしい場所を選んで須賀と呼び、宮殿を作り足名椎も呼び寄せて長く幸せに暮らしました。

高天原でのスサノオは荒くれ男で、スサノオの名前から「すさまじい」とか「すさぶ」といつた言葉が生まれるくらいです。ところが、天下った後は遠呂智退治で英雄となってしまいます。

最も、当然キングギドラばりの怪獣が本当にいたはずはなく、おそらく出雲の山中を支配する8つの部族、首領たちということだろうというのは想像しやすい。ただ斐伊川の氾濫による自然災害を指しているとの説もあるようです。

斐伊川は確かに氾濫が多かった河川で、同時に砂鉄の産地としても有名です。そこで、おそらく当時の普及していた銅剣よりも強固な鉄剣が出てきても不思議が無い。

スサノオがアマテラスに献上した後、草那芸の太刀は天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)と呼ばれ、さらに日本武尊(やまとたけるのみこと)に手に渡り草薙剣となります。

天岩屋戸を開けるために使われた、鏡と勾玉、そしてこの剣によって天皇の印となる三種の神器が揃いました。