ここで、一度古事記の世界観を整理しておきます。
高天原(天つ神の世界)
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天浮橋
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葦原中国(地上、国つ神の世界、主として高千穂、出雲、紀伊国)
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黄泉比良坂 --- 黄泉国(死者の世界)
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根の堅州国(スサノオが治める地底?世界)
基本的には世界は3層構造。ただし、地下の世界については黄泉比良坂が共通の出入り口で、黄泉国と根の堅州国の二つに分かれています。もしかしたら他にも出入り口は存在しているのかもしれません。
これを現実世界にあてはめて考えると、高天原は九州(高千穂)付近、葦原中国は九州、島根・鳥取、近畿(淡路島)、紀伊半島、そして黄泉国と根の堅州国は出雲という位置関係にある感じです。
さて八十神の殺意の追跡を振り切って、根の堅州国に到着したオオナムチは、速攻でスサノオの娘である須勢理毘売(すせりひめ)と、お互い一目ぼれのラブラブで一夜をともにしてしまう・・・
どうも古事記はこういう展開が多い。今どきの方がよほど節操があるというか、保守的というか・・・おおらかと言ってしまえばそれまでですが、本能で日々をすごしていたんでしょうかね。
スサノオに結婚する許しを得ることになるわけですが、ここで試練が与えられます。最初は蛇の部屋で一晩明かせということ。次の夜は蜂と百足(むかで)の部屋。いずれもスセリヒメからお守りアイテムをもらって問題なし。
翌日は、野原でスサノオが矢を放ち、これを取って来いと言われる。オオムナチが野原に入ると、スサノオは火をつけます。ところが鼠に助けられ、鼠の穴に入ってセーフ。しかも、穴の中にあった矢まで発見して持ち帰りました。
最後に、スサノオは自分の頭の虱(しらみ)を取れと言います。ところが頭にいたのは虱ではなく百足で、スセリヒメの助けでうまく誤魔化しました。スサノオが寝入ってしまったので、髪の毛を柱にしっかりと結び、御殿の入り口を大岩で塞いで、スセリヒメを背負い、スサノオの弓矢、太刀、詔琴を奪って逃げ出します。
気が付いたスサノオは逃げていくオオナムチに、「これからは大国主神(オオクニヌシノカミ)と名乗り、八十神を追い払い、高天原に届く宮殿にスセリヒメと一緒に住んで国を治めろ」と言いました。
オオナムチ改めオオクニヌシは、有言実行、八十神を返り討ちにして、初めて国を作ったわけです。
ここから、オオクニヌシはさわやかイケメンのイメージから脱却し、女好きの王様になっていくんですが、その手始めに八十神のアイドル、八上比売(やがみひめ)を呼び寄せちゃった。
スセリヒメとラブラブの新婚生活のはずなのに早くも側室登場では、そりゃスセリもイライラするってもんです。ヤガミヒメは、スセリに恐れをなして帰ってしまいます。
次に、高志国(こしのくに、今の北陸)の沼河比売(ぬなかわひめ)をものにします。さらに胸形(宗像)の奥津宮にいた多紀理毘瓜命(タキリヒメノカミ)にも手を付けます。続けて神屋楯比売命(カミヤタテヒメノカミ)・・・なんとかヒメ、かんとかヒメ・・・・ ・・・・はぁ、スセリの嫉妬が深くなっていくのもやむを得ない話。
さて、肝腎の国造りはというと・・・遅々として進んでいない。ここで登場して国造りを手伝う重要な役どころを荷うのが神産巣日神(カミムスビノカミ)の子である少名毘古那神(スクナビコナノカミ)。
スクナビコナはとにかく小さいらしい。一寸法師のモデルかと話題になる神様ですが、実務に長けた内閣官房長官という役所なんですが、なぜか短期間?で常世国(とこよのくに)に行ってしまいます。
常世国は、古事記の世界では葦原中国と同じレベルか、もしかしたらちょっと上くらいに位置する海を渡った理想郷、あるいは桃源郷と考えられている場所。
沖縄のことか、さらにそれを超えた朝鮮半島や中国本土のことなのか、明解な答えはありませんが、異世界の一つとして古代日本史にたびたび登場します。
スクナビコナに去られて途方に暮れるオオクニヌシのもとに、続けて登場するのは出所不明の大物主神(オオモノヌシノカミ)です。「大和の三輪山に自分を祀れば国造りはうまくいく」というので、オオクニヌシはその通りにして国造りは一気に進みました。
オオモノヌシは、オオクニヌシと名前が似ています。日本書紀では「オオクニヌシの魂の分身」という位置づけとされていますので、とにかく女たらしのオオクニヌシがスクナビコナから刺激を受けて、本気の政治家として覚醒した決意表明みたいなところなんでしょうかね。
いずれにしても、オオクニヌシの国作り、つまり「日本史」的なことについては記述があっさりし過ぎ。古事記を作った側からすると、制圧した相手、つまり敗者側の歴史ですから資料不足は否めません。