2017年10月22日日曜日

古事記(1) 天地初発時


天地初めて発(あらわ)れし時・・・

というのが古き事を記した、古事記の始まり。日本漢文体というもので書かれ、読み方はいろいろ。ただし、現存しているのはたくさんある写本のみ。

まだ人どころか、大地すらなかった時から始まります。最初に登場するのは上と下、つまり天と地なのですが、そもそもどうして天地が出てきたのかは説明がありません。

もう、そこんとこは理屈じゃない。そういうもんだと信じないさい、ということ。最初から上下関係というものが理屈抜きに存在し、これは変更することができないということが大前提です。

最初に動きがあったのは天の方。しかも、通常の「天」よりもさらに「高い」ところである高天原(たかまのはら)と呼ぶのですから、かなり強気。

そこに登場するのが、天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)、高御産巣日神(タカミムスビノカミ)、神産巣日神(カンムスビノカミ)の三柱。なお、神様は「柱」でカウントする約束。

いずれも性別がなく、すぐに身を隠したという・・・何だかよくわからない。このよくわからないというところが大切なことで、神様ですからよくわかっちゃいけない。

続いて地の方に動きがあつて、漂うような混沌とした表面に宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコジノカミ)と天之常立神(アメノトコタチノカミ)が出現しますが、こちらも性別不詳ですぐに消えてしまいます。

ここまで登場する五柱の神様が、別格で「別天つ神(ことあまつかみ)」と呼ぶんですが、こうやって登場する神様の名前を出てくるたびに書いていくと、とてもしんどいことになる。

当然、このあたりはどう考えても創作でしょうから、7~8世紀頃の人々の考え方、生活の雰囲気、そして少しずつ入ってきた中国の思想に対する対抗心などが表れているということ。

このあと出てくるのが、神世七代(かみよななよ)と呼ばれます。
① 国之常立神(クニノトコタチノカミ)
② 豊雲野神(トヨクモノノカミ)

ここから男女のペアになる。
③ 宇比地邇神(♂、ウヒジニノカミ)、妹須比智邇神(♀、イモスヒジニノカミ)
④ 角杙神(♂、ツノグイノカミ)、妹活杙神(♀、イモイクグイノカミ)
⑤ 意富斗能地神(♂、オホトノジノカミ)、妹大斗乃弁神(♀、イモオオトノベノカミ)
⑥ 於母陀流神(♂、オモダルノカミ)、妹阿夜訶志古泥神(♀、イモアヤカシコネノカミ)
⑦ 伊邪那岐神(♂、イザナキノカミ)、妹伊邪那美神(♀、イモイザナミノカミ)

やっと、聞いたことがある名前が出てきました。

ちなみに、ここまで登場する最初の17柱の神々に因んで作られているのが、十七条憲法なんだそうです。十七条憲法はあの聖徳太子によるもので、古事記成立より前の話。焼失する前の古事記の原典がヒントになったことは間違いないようです。

最後に登場したイザナキ・イザナミのペアに、天つ神一同から「地を固めて国を作れ」という指令が下り、天沼矛(あめのぬぼこ)を授けます。

イザナキ・イザナミは、天地の間に架かる天浮橋(あめのうきはし)から下を覗いて、天沼矛を下ろし海面をかきまぜると、矛先から落ちた雫が島になったという・・・この島に淤能碁呂島(おのごろしま)と名付けて降り立ちました。

淤能碁呂島は、日本書紀では磤馭慮島と表し、別名を自凝島(自ら固まった島)とも呼びます。架空の島であるという説と、淡路島の周辺の島のどれかを指すという説があります。

この後、まだまだSFチックに話が続きますが、とりあえずやっとイメージがしやすい話になっていきます。

淤能碁呂島の関連する場所の地図はこちらから