バイオシミラーは、新薬と同じような治験が行われ、有効性・安全性について先行薬との同等性が証明されたデータが公表されています。生物学的製剤(いわゆるバイオ製剤)は、薬の価格が高額で、使用する方への経済的負担が大きいこともあり、より安価なバイオシミラーは、積極的に利用する意味があると考えています。
現在、関節リウマチ治療に用いられている生物学的製剤の中で最も高いシェアを獲得しているのが、2005年に発売されたファイザー製薬の「エンブレル」ですが、本年6月にそのバイオシミラーである「エタネルセプトBS「MA」」があゆみ製薬から発売されました。
一番使われている自己注射のしやすいシリンジ・タイプのものは、一箱に4本入っていますが、薬価はエンブレルで約6万3千円円/箱、エタネルセプトBSで約3万7千円です。実際に薬局でお支払いになる金額は。自己負担割合により異なります。
当院でも、使用する方々の利益を考え、先行する「エンブレル」からの積極的な切り替えを実施いたしました。ところが、7月には製薬会社より予想を超える需要のため製造量が追いつかないというアナウンスがあり、新規に処方しないよう要請がありました。
その後綿密な調査を行った結果、さらに9月になって現状では需要に対して供給できるのはわずかに20%程度であることが判明したとのことで、各医療機関ごとに来年3月までに供給できる本数の均等な割り当てがされたとの案内がありました。
この割り当てでは、使用中の方、公平に全員に振り分ける場合、ぎりぎりあと1回だけは処方できるかもしれない程度の量にしかなりません。従いまして、使用する本数が多く経済的な負担が高い方などを優先するような、ある程度の選別をせざるをえない状況であると考えています。
同等薬との扱いになっていますが、バイオ製剤を切り替えた場合、期間が経つと前薬に戻しても効果が以前ほどには出ない可能性も否定できません。戻すのであれば、あまり遅れない方が良いのではないかとも考えられます。
従いまして、実質的に、今後の処方分については元々使用していたエンブレルに戻すしかない状況であることをご理解いただきますようお願いいたします。いろいろご迷惑をおかけして、大変申し訳ありません。
なお、製造量は当初の4倍にあげているため、来年4月以降は十分に供給できるとの説明でした。しかし、現在で20%の供給量で、4倍になっても100%には届かないわけですから、少なくとも来春以降も新規の方への使用は困難な状態が続く可能性があります。
このような状況に対して、少なくとも、HP上でトップに掲載すべき「お知らせ」と考えますが、あゆみ製薬は一般向けのアナウンスは、おそらくほとんどしていません(9/15現在)。このような点も含め、あまりの見込みの甘さには製薬会社として問題を指摘することは禁じえません。
いずれにせよ、使用する方々のことを考えて、より早期に問題を解決できるように努力してもらうしかありません。