ゲオルク・ショルティ (Georg Solti, 1912-1997)はハンガリー生まれのユダヤ系で、大戦後から指揮者として注目され、やはり一番の功績はシカゴ交響楽団の音楽監督を1969年から1991年まで続けたこと。1972年にイギリス国籍を得て、ナイトを叙勲されSirの称号で呼ばれます。
ショルティのマーラーは、現在全集としてボックスセット化されているものは、1970年の第5番と第6番から始まり、1971年の第7番と第8番(ミントン、ポップ、コロなど)、そして間があいて1980年の第2番(イソベル・ブキャナン、ミラ・サーカイ)、1982年の第3番(ヘルガ・デルネシュ)と第9番、1983年の第1番と第4番(キリ・テ・カナワ)という組み合わせになっています。
全集に含まれませんでしたが、シカゴ響とは、1970年にはさすらう若人の歌と少年の魔法の角笛の一部をイボンヌ・ミントン(Ms)の歌唱で、そして1972年には大地の歌をミントン、ルネ・コロ(T)の歌唱で録音しています。
さらに1990年には第5番の再録音もありますが、第10番の録音は残っていないようです。ショルティのマーラーはシカゴ以前に、RCOと1961年の第4番と大地の歌、ロンドン交響楽団と1964年の第1番、1966年の第2番、1967年の第9番、1968年の第3番を録音しており、曲によっては好みが別れるところ。
第7番のところでも書きましたが、ショルティのシカゴは金管楽器の響きが特徴とされ、ブラスが元気一杯になるところはまさに「健康優良児」なのですが、その金管を引き立てているのが打楽器。ティンパニーは響きを抑えて、比較的乾いた打音でびしびしとしている。これは、「ドーン」ではなく「ドン!」という感じで、元気印を増していると思います。
じゃあ、弦楽器は弱々しいのかというと、弦楽器が目立つ第9番を聴いていると、これもけっこうしっかりと音を出しています。個人的な感覚ですけど、最後ではバーンスタインは悲壮感を持って死を迎える感じですが、ショルティはやることをやって胸を張って死んでいく・・・というところ。
ショルティはシカゴと最初に録音したのが第5番であり、そして唯一再録音したのも第5番。さらにいうと1997年、亡くなる2か月前のチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団との最後のライブでの演奏曲目も第5番でした。
最後が第5番というのは偶然でしょうけど、ショルティの気持ちとして第5番に何らかの思い入れがあっただろうことは容易に想像できます。
第10番は、実は1996年に初めてコンサートで演奏したのようですが、その時のオケがトーンハレ管でした。残念ながらメディアは登場していないようです。