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2020年1月11日土曜日

Christa Ludwig, Rene Kollo, Herbert von Karajan BPO / Mahler Des Lied von der Erde (1974)

1958 フリッツ・ライナー指揮 シカゴ響
1964 オットー・クレンペラー指揮 フィルハーモニア管
1967 カルロス・クライバー指揮 ウィーン響
1970 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィル
1972 レナード・バーンスタイン指揮 イスラエル・フィル
1972 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィル
1974 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィル
1983 ヴァーツラフ・ノイマン指揮 チェコ・フィル

これは、すべてマーラーの「大地の歌」の録音です。このうち1970年と1972年のカラヤンは非正規盤と思われますので、正規盤は6種類です。

マーラーの録音を網羅するデイコグラフィを掲載しているネットのサイトから抜き出してみました。で、何? ということなんですが、すべてクリスタ・ルードヴィヒが独唱者として参加しているものなんです。

クレンペラーのものは、「大地の歌」としては不滅の名盤と呼ばれるもの。クライバーは、クライバー唯一のマーラー録音。

クリスタ・ルードヴィヒは1928年生まれですから、ライナーとの初録音は30才、最後のノイマンの録音時は55才です。

1970 ラファエル・クーベリック指揮 バイエルン響
1970 ジョージ・セル指揮 クリーブランド管
1975 ベルナルド・ハイティンク指揮 コンセルトヘボウ管
1975 ルドルフ・ケンペ指揮 BBC響
1977 レイモンド・ルパード指揮 BBC北響

一方、こちらはジャネット・ベイカーが独唱する「大地の歌」で、1933年生まれなので、37才から44才までの歌唱を聴くことができます。ベストはハイティンクの盤でしょうか。

二人は60~70年代を代表するライバルのアルト歌手ですが、こうやって並べてみると、歌手と指揮者の組み合わせは重ならないものです。指揮者の好みもあるでしょうけど、レコード会社との契約の関係もありそうです。

マーラー録音で、この二人のどちらも起用しているのがバーンスタインなんですが、さすがに同じ声域の歌手ですから共演しているものはありません。同じセット内で二人の名前がクレジットされていものは、DGのシューベルト歌曲集のボックスとジウリーニのベルディ/レクイエムくらいではないでしょうか。

さて、本題はカラヤンなんですが、実はカラヤンもマーラーの演奏については消極的。避けて通れそうにないので、しかたがなく何曲かは録音しましたという感じ。それでも、カラヤン信奉者からはさすがカラヤンと褒め讃えられる。

自分はアンチ・カラヤンなので、基本的なスタンスとしてはほぼ無視。それで困ることはありませんが、マーラーについては有名なバーンスタインとの「喧嘩」の話が出てきます。

1979年10月に、バーンスタインが唯一残したベルリンフィルとの演奏がマーラーの第9番。その直後の11月に、俺様カラヤンが同じ第9番を録音したことで、バーンスタインは「泥棒のところには二度と行かない」とへそを曲げたというもの。

もっとも、これらの話は尾ひれがついて膨らんでいくので、どこまで本当かは当人だけにしかわかりません。ただ、上のリストを見ていて気がついたことがあります。

バーンスタインの「大地の歌」、最初の1966年の録音は男性歌手二人。カラヤンはいつもアルトにはクリスタ・ルードヴィヒを起用していましたが、男性歌手は別々。1972年の二度目のバーンスタインはルードヴィヒとテノールにルネ・コロを持ってきた(DVD映像と同じ音源)。

すると1974年のカラヤン正規盤での独唱者も、実は同じルードヴィヒとコロを起用しているんですね。はっきり言って、さして上手とは言いにくいコロをカラヤンがここで使う意味が、バーンスタインに対するライバル心以外には想像しにくいと思うんですよね。

ことマーラーに関しては、このあたりに二人の確執の根源があるように思えて、実に興味深い。クラシック音楽の世界には、シンガー・ソング・ライターみたいな人はほとんどいないので、演奏者によるレパートリーのかぶりは必須ですから、こういう話は日常的に起こりうることなんでしょうね。