2020年1月8日水曜日

Dietrich Fischer-Dieskau & Karl Bohm / Mahler Lieder (1963)

カール・ベームも、20世紀後半を代表する指揮者の一人ですし、自分のクラシック愛好歴の中でも、一番目か二番目に買ったレコードがベームの第九だったということで、大変親しみは持っています。

オーストリア生まれで、その風貌から、冗談はまったく言わない通じない頑固親父というイメージ。実際にもそうだったようで、長く務めたウィーンフィルではその厳しさが恐れられるとともに、絶大な信頼もしていたそうです。

70年代の勢力図は、ベルリンのカラヤン、ウィーンのベーム、アメリカのバーンスタインの3巨頭で大方占めていたといっても過言ではないように思いますが、自分がマーラーそのものであるかの如く邁進したバーンスタインに比べて、ドイツ語圏の二人はマーラーに対しては積極的な取り組みをしませんでした。

ベーム自身は、マーラーの「直弟子」であったブルーノ・ワルターを敬愛していましたが、その一方でマーラーのライバル的な存在であったリヒャルト・シュトラウスの本人後任の継承者という立場であったこと、そして何よりもナチス統率化のドイツ語圏でマーラーらユダヤ系作曲家の音楽が禁止されたことも強く影響しているのかもしれません。

フルトヴェングラーと同じで、歌手フィッシャーディスカウにより、マーラーを再確認したのは随分と遅くの話で、完全に出遅れた感があり、もはやマーラーの音楽は理解の外であり、短く完結する歌曲のみにわずかな録音を残すのみです。

正規盤としては、1963年のフィッシャーディスカウにベルリンフィルと共に伴奏したDG盤のみがあります。ここでは「リュッケルト歌曲集」、「亡き子をしのぶ歌」が演奏それています。

ザルツブルク音楽祭の自主製作盤として、1962年にフィッシャーディスカウと「亡き子をしのぶ歌」、1969年にクリスタ・ルードヴィヒと「さすらう若人の歌」、1972年にクリスタ・ルードヴィヒと「亡き子をしのぶ歌」があります。海賊版で1978年のザルツブルク音楽祭でのイボンヌ・ミントンとの「亡き子をしのぶ歌」もあるようです。

実は、いずれも入手していないので、内容についてどうのと書くことはできませんが、フィッシャーディスカウはさすがの歌唱であり、ベームも伴奏としてうまくまとめ上げているという評判です。

いずれにしても歌曲伴奏だけで、残念ながら交響曲の録音はありません。まぁ、中途半端に手を出すことを良しとしなかったということでしょうから、頑固親父らしいということで納得しておきましょう。