2020年1月15日水曜日

The Gustav Mahler Celebration (2010)

これはDVDなんですが、おそらくテレビ放送用の企画物で、通常のコンサートの全曲演奏会とは違った、マーラーの音楽を少しずつ広く楽しもうというスタイル。

ですから、はっきり言って普通のクラシック愛好家にすれば、中途半端な演奏会という感じは否めません。ただし、マニア的には注目すべき部分が無いわけではありません。

まず指揮者がマンフレート・ホーネック。この人は元ウィーンフィルのヴィオラ奏者で、指揮者に転向してからはアバドの弟子になって、その後ピッツバーグ交響楽団といくつかのマーラー交響曲の録音が評価されています。

オーケストラはマーラー室内管弦楽団。アバドが組織したオケで、ユーゲント出身の優秀な演奏者が参加し、そのままルツェルン祝祭管の母体ともなっています。ですから、アバドのルツェルンのビデオでおなじみの顔がたくさん出てくるのが嬉しい。

ソロイストは、個人的に一番お気に入りのメゾソプラノのアンネ・ゾフィー・フォン・オッターが登場するのがポイントが高い。そして、晩年のバーンスタイに登場し、その後マーラー専門みたいな存在になったバリトンのトーマス・ハンプソンも楽しめます。最後だけですがソプラノのマリタ・ソルベルグも出演しています。

そして、会場がユニーク。このコンサートは2010年のマーラー生誕150年を記念する企画のようですが、なんとマーラー生誕の地、カリシュト村にステージを用意して誕生日の7月7日に行われた野外コンサートです。風景が映像としてところどころにはまって、音楽を楽しむのには邪魔ですが、マーラー所縁の地の様子がわかります。

収録曲を順番に並べてみると、
1. 交響曲第2番 第1楽章
2. 少年の魔法の角笛 ~ ラインの伝説 (Ms)
3. さすらう若人の歌 ~ 朝の野を歩けば (Br)
4. 交響曲第2番 第4楽章 原光 (Ms)
5. リュッケルト歌曲集 ~ 私は仄かな香りを吸い込んだ (Br)
6. 少年の魔法の角笛 ~ 死せる鼓手 (Br)
7. 交響曲第3番 第5楽章 ~ 三人の天使が歌っていた (Ms)
8. リュッケルト歌曲集 ~ 私はこの世に捨てられて (Br)
9. 少年の魔法の角笛 ~ 不幸な時の慰め (Ms、Br)
10. 交響曲第2番 第5楽章終結部 (Ms、S)

というわけで、マーラーの交響曲第2番を中心に胆だけをうまく選曲した・・・と言いたいところですが、見終わっての欲求不満感がかなりある。

交響曲第2番をぶつ切りにしたのは、やはり失敗でしょう。気持ちの盛り上がりが分断してしまい、また突然最終合唱が始まっても「何かなぁ~」というところ。毎回、拍手が入るのもうるさいだけ。

まぁ、テレビ向けのショーと割り切ってしまえば、ソロイストを中心とした見所はたくさんあるので、まだマーラーを知らない超初心者の入門にはいいのかもしれません。