どうしても固定観念というものがあって、マーラーで「大地の歌」を交響曲と呼んでも、それを交響曲として聞くのには無理を感じてしまいます。全6楽章というより、全6曲からなる連作歌曲集・・・といって、その価値が下がるわけではありません。
実際のところ、マーラー自身が1907~1909年に作られたオーケストラ譜と同時進行で、ピアノ伴奏譜を作っていたという事実がある。こういうことは、他の交響曲ではありません。
ただしピアノ稿が出版されたのは、死後80年近く経った1989年の事。しかも、初演はヴォルフガング・ザバリッシュのピアノ伴奏でリポフシェク(Ms)、ヴィンベルイ(T)という豪華メンバーで日本で行われました。
ただし、この世界初演の録音は残っていないようです。初録音はファスベンダーらによるものがあります。今回紹介するのは、スミス(T)、パレイ(Br)、ラーデマン(p)という男性三人組による演奏。
ラッキーなことに、ヘンスラーの格安マーラー全集に丸ごと組み込まれている。この全集には、ダムラウ(S)、パレイ(T)の組み合わせで「少年の魔法の角笛」ピアノ伴奏版も含まれています。本音をいうと、「大地の歌」もパレイと女声の組み合わせだと・・・
そうはいっても、これがなかなか良い。二人の男性歌手はいずれも素晴らしい歌いっぷり。やはり、オーケストラ伴奏に比べて、声量を抑えられるので、細かニュアンスを出しやすいところがいいんじゃないでしょうか。
オーケストラ版を聴くと、どうしてもピアノだけの伴奏はやや物足りない感は否めませんが、曲の構成の細かい所はわかりやすいというメリットもあります。