マーラーの交響曲では、第8番を除いて独唱者は女声のみなので、男性歌手の活躍の場はおのずと歌曲が中心になります。男声というと、当然のようにディートリッヒ・フィッシャー・ディースカウは、最も名実ともに揃った史上最強のマーラー歌手と言えます。
フィッシャーディスカウの「大地の歌」の初録音は、1959年。この曲では、アルトまたはバリトン、そしてテノールの二人が登場するので、バリトンのフィッシャーディスカウは、必ず男同士の組み合わせになります。正規盤は以下の3種類。
1959年 パウル・クレツキ指揮フィルハーモニア管 マレー・ディッキー(T)
1964年 ヨセフ・カイルベルト指揮バンベルガー響フィル フリッツ・ブンターリッヒ(T)
1964年 ヨセフ・クリップス指揮ウィーンフィル フリッツ・ブンターリッヒ(T)
1966年 レナード・バーンスタイン指揮ウィーンフィル ジェームス・キング(T)
1959年盤はクレツキ指揮て有名ですが、音質がいまいち。1964年盤はDGなのにモノラルでクリップスの指揮による伴奏が評判を下げています。
ちなみに指揮をしている途中で亡くなったのはシノーポリが有名ですが、実はもう一人いてカイルベルトも心臓発作で倒れています。
となると決定盤は1966年のバーンスタイン盤。本来はニューヨークでマーラーを録音していた時期の物なんですが、契約の関係でDecca録音となり別立てになりました。
また、フィッシャーディスカウはバーンスタイン自身によるピアノ伴奏で1968年に歌曲集も録音したので、これらのバーンスタインとの仕事でマーラー録音史上の栄冠を勝ち得た感があります。
実際、男声と女声が交互に出てくる方が、聴いていて楽しいしコントラストもはっきりするので、バリトン歌唱はフィッシャーディスカウ以外は「なんかなぁ・・・」という感想になりやすい。アルト歌唱を凌駕しているのは、フィッシャーディスカウだけと言っても過言ではありません。