ちょっとその気になってネット検索をすれば、マーラーの名盤はどれとどれなんてことはすぐにわかります。ここでは、アバドから始まって、バーンスタインは避けて通れないというところなんですが、その他のものはあまり取り上げていません。
わざわざ、マーラー駆け出しの自分が書くまでもなく、たくさんの批評がいくらでもありますから、とりあえずあまり話題に上らない、隠れ名盤とか、珍品の話ばかりになっている。それはそれで貴重とも言えますが、やはり王道からはだいぶはずれてしまうことになります。
というわけで、一度軌道修正して、誰もが認める名演・名盤の話。交響曲全集を成しえた指揮者にスポットを当ててみます。
ガリー・ベルティーニ (Gary Bertini, 1927-2005) はイスラエルの指揮者で、1958年にバーンスタインと深いつながりがあるイスラエルフィルでデヴュー。イスラエル室内管、デトロイト、フランクフルトで活躍し、晩年は東京都交響楽団の音楽監督をしていたので日本ではまじめなクラシックファンにはお馴染み。
1983年から1991年は若杉弘の後任としてケルン放送交響楽団の首席として、世界に通用するオケに育て上げ、この間にマーラー全集(旧EMI)を完成させています。
特に第1番、第8番、第9番、大地の歌は日本のサントリーホールでライブ録音しています。第10番はアダージョのみです。
1984年 第6番
1985年 第3番 グヴェンドリン・キルレブルー
1987年 第4番 ルチア・ホップ
1990年 第5番、第7番
1991年
第1番、第9番、第10番(アダージョのみ)
第2番 クリスティーナ・ラーキ、クィヴァー
第8番 ユリア・ヴァラディ、マリー=アン・ヘッガンダー、マリア・ヴェヌーティ、アン・ハウェルズ、フローレンス・クイヴァー、パウル・フライ、アラン・タイタス、ジークフリート・フォーゲル
大地の歌 マリヤーナ・リポヴシェック、ベン・ヘプナー
2002年から2004年にかけて2回目の全集を目指して東京都響との録音がいくつか残されましたが、残念ながら未完に終わりました。
全集ともなると全体を通してすべてが名演とはいえないことはしばしばありますが、ベルティーニ盤はどれもが一定水準以上で、比較的短期間に出来上がったせいもあって全体のブレが少ない演奏。
演奏時間を見てもどれも標準的で、感情を込めすぎず(あるいは感情に流されず)にたんたんと演奏しているという印象ですが、きちんと押さえるところは押さえて透明感のようなものを感じます。
第4番の独唱はルチア・ポップ、大地の歌にはマリヤーナ・リポヴシェック、ベン・ヘプナーといったマーラー常連も登場します。
最初に出会うマーラーとしては、普通にお勧めできる全集だろうと思いました。