2020年5月4日月曜日

新型コロナウイルスの注目ニュース


国内の新型コロナウイルスの実際の感染者数を考える上で、興味深い数字が発表されました。改めて、国内の感染状況を考えてみたいと思います。

慶應義塾大学病院では、4月6日から末までに新型コロナウイルス感染者を除く一般の入院患者に対して、新型コロナウイルスのPCR検査を行いました。結果は258名中、7名にPCR検査陽性を確認しています。つまり、感染症を心配していなかった方のうち2.7%に無症候性感染があるという結果です。

また、神戸市立医療センター中央市民病院では、4月1日~4月7日までの間に外来を受診した患者千人ののうち、3.3%が新型コロナウイルスに対するIgG抗体を持っていたと発表しました。

ちょっと前に感染者数についての考えてみましたが、これはオーバーシュート(爆発的感染)が生じた、中国、アメリカのデータをもとにした話でした。まだオーバーシュートとは言えない日本の現状で、あらためて感染者数を考える上で参考になる数字です。

慶応の調査はウイルスそのもの、神戸市のものは感染後に体内に作られる抗体を検出するもので違いはありますが、どちらも3%程度の結果だったことは整合性があるかもしれません。

これは、無作為に抽出した集団を対象とした調査では無いですし、母集団の数が十分とは言いにくいので、そのまま一般人口に当てはめることは慎重さが求められますが、国内ではすでに360万人が感染している可能性を示唆しています(日本の総人口を1億2千万人として)。

現在、感染がPCR検査で確定している陽性者は約1万5千人、亡くなった方は約500人。ところが、実際はその240倍の感染者がいるとするなら、感染した場合の死亡率は人口100万人当たり約140人、0.014%です。つまり、日本の総人口のうち、最終的には1万7千人がこの感染症で死亡するかもしれないということ。

4月15日、厚生労働省の新型コロナクラスター対策班の西浦博氏が発表した「人と人との接触を8割減らさないと、日本で約42万人が新型コロナで死亡する」というシミュレーションに比べれば、随分と少なくはなりますが、こちらの方が現実味があるかもしれません。

もっとも、感染者の多い地域、少ない地域、医療の余裕の地域差、そして今後の治療体制の確立などにより、大きく変動する数字ですし、何よりもステイ・ホームの実践により通常はこれよりも少ない数字になる方が可能性は高いと思います。

さらに4月末に別の注目のニュースがありました。

横浜市立大学が、新型コロナウイルス抗原(ウイルスそのもの)を特異的に検出できるモノクローナル抗体の開発に成功したというもの。インフルエンザ簡易検査キットのように、PCR法よりも簡便に迅速(おそらく30分以内)に結果が出るだろうと予想します。

実用化にはまだまだ時間が必要ですが、検査の間口が広がることにつながります。ただし、PCR検査よりも偽陰性率(感染していても陰性)は上がる可能性があります。また、現行の指定感染症の枠組みでは、検体採取には、手間がかかるのは同じです。

また、臨床検査薬を製造・販売する「富士レビオ」が、抗原迅速診断キットを開発したと発表しています。厚生労働省が薬事承認すれば、すぐにでも週20万件分のキットを量産できるとしています。

このあたりの検査方法も、治療薬・ワクチンの開発競争と同じで、通常では考えられない速さで研究が進んでいるようです。

よく言われている、日本ではPCR検査数が少ないことは確かです。しかし、心配な人全員を検査することは、そこにマンパワーを取られたり、検査資材・防護資材を消費することになりプラスにはなりません。

また、元から存在する偽陽性・偽陰性の問題に加えて、様々な検査のミスも出ており、絶対的な物ではありません。陰性だからと安心できるわけではありません。

実際の救急の場でも症状と画像検査でほぼ診断はできているだろうと想像しますので、検査は結果が出た後にの患者さんへの接し方や、退院の目安とし利用するための要素と考えられます。

メディアでは、いまだに検査がちゃんと行われないことが問題で、全例実施しないことを批判する論調が続いていますが、無症候性感染者や風邪症状で終わる軽症者が大多数であることを考えると、診断上はある程度対象を絞った方が効率的なはずです。

ただし、医師が検査をした方が良い(つまり新型コロナウイルス感染の可能性がある)と判断した方については、スムースに検査を行なってもらいたい。また、妊婦の方や、リスクのある持病がある方も、心配な症状があれば速やかに検査はすべきと考えます。

それらの中で、重症化する方、特に亡くなる方をいかに増やさずに終息を迎えられるかが重要だと思います。