ノルマンディ上陸作戦、マーケット・ガーデン作戦、バルジの戦いとアメリカ軍の主だった戦闘の最前線を戦い抜いた第101空挺師団は、それでもなお戦闘のエリート集団として、なかなか休息の日々を送ることができずにいました。
第8話 捕虜を捉えろ
ノルマンディ上陸時の隊員は半分以下となっていたE中隊は、ライン川の目と鼻の先、ハーゲナウの町に進軍していました。4か月ぶりにケガから復帰したウェブスターは、変わり果てた仲間に溶け込めず補充兵のようでした。そこへ士官学校出たてのジョーンズ少尉もやってきます。川の反対側のドイツ軍の現状を確認するため、夜のうちにボートで川を渡り捕虜を捉える任務が言い渡されます。何とか二人の捕虜を捉えたものの、一名の戦死者を出し、隊員たちの疲労は極限達していました。前夜の成功に気をよくした大隊長は、連日にわたり捕虜を捉えて来いと命令しますが、ウィンタースは隊員には朝まで寝てろと指示し、捕虜は捕えられなかった報告を上げるように言うのでした。ウェブスターは、一つの戦闘を経て仲間に戻れました。そして、ウィンタースは少佐に昇進します。
第9話 なぜ戦うのか
ノルマンディ以来、ウィンタースと共に戦ってきたニクソン大尉は、大きな精神的ストレスで酒量が増える一方でした。しかも、そこへ妻から離婚の手紙が届き、何のために自分が戦場にいるかも見失いかけています。各地のドイツ軍はどんどん撤退したり降伏していましたが、ドイツ国内に入った大隊は、ローズベルト大統領死去の知らせが届きますが、彼らはさらに東のランツベルグへ転進します。そこで、ドイツ軍が急遽撤退した後のユダヤ人の強制収容所を発見し、そのあまりに凄惨な状況に、数々の死を目撃してきたウィンタースらですら言葉を失います。強制収容所については、大戦末期のこの時点で次々とは発見され、世界を震撼させました。そして、ヒトラー自殺の報を聞きつつも、最後の作戦地へ向かうのでした。
最終話 戦いの後で
E中隊の最後の目的地オーストリア。そこからヒトラーの南の別荘、通称「イーグルネスト」を確保することでした。しかし、すでにドイツ軍はいない。彼らは、風光明媚な土地で、次の出撃に備えて待機するのです。しかしその中でも事故や事件で亡くなる仲間もいました。ウィンタースは、いまだ続く太平洋戦争への転身を志願しますが、上官に「仲間が離さないし、E中隊が太平洋に行くときは君が率いていけ」と言われます。降伏したドイツ士官が、部下に最後の演説をする内容は「強い絆で結ばれた君らと戦えて誇りだ。今後は平和な人生を送っほしい」というものでした。ウィンタースはそれぞれの戦後を心配し、いろいろな手配をしているうちに日本が降伏した知らせが届き本当の終戦を迎えました。生き残り帰れることになった隊員たちのそれぞれの人生を紹介してドラマは終了します。
全体的にド派手な戦闘シーンが満載ではありませんが、実際の小隊規の戦闘はそんなものなのかと思いました。いつでも大勢の敵味方で撃ちまくっていたら、弾薬はいくらあっても足りません。「プライベート・ライアン」のノルマンディの描写は、あくまでもめったにない大規模作戦だからということ。
このドラマが目指しているのは、そういう戦場の日常を一つの部隊を中心に、追いかけていくことです。戦闘そのもののリアルよりも、戦争に身を投じた兵士たちのリアルが描かれています。冒頭に、このドラマ制作時に存命していた、第101空挺師団E中隊の隊員のインタヴューが挿入されていることもリアル感を高めています。
そこには、現実に兵士一人一人の出来不出来もあります。それが上官の場合は、兵士たちは悲惨です。ダミアン・ルイス演じるウィンタースは、ドラマの中で中隊副官の少尉から、大隊副司令官の少佐に昇進していきますが、戦闘の指揮についても的確で、部下の事を大事にする優秀な指揮官です。ある意味理想の上司と呼んでもいいかもしれません。
それがAからIまで9つある第101空挺師団の中でもE中隊が、傑出した功績をあげたポイントだったのかもしれません。とは言っても、笛吹いて踊らずでは意味がない。サポートする軍曹なども優秀で、互いに仲間を大事にする一般兵士がいてこそのものだったことも忘れてはいけない。
確かにこれを2~3時間の映画にしていたら、とても描き切れていません。ウィンタースを中心はしていますが、E中隊の全員が主人公であり、各回で注目される兵士が変わっていく作りは、連続ドラマだからこそ可能だったと思います。
歴史的な経過を知ったうえで観たので、彼らの任務の目的などはよく理解できましたが、それでもなお実際の戦闘がどういうものだったのか、切実に伝わってくる内容には驚きの連続です。戦勝国のアメリカの作ったドラマではありますが、彼らもまた戦時には非情な現実に関わっていたことも目をつぶることなく描いています。それでも敵味方関係なく、一つの目的のために命をかけて戦った仲間たちの絆(Band Brothers)が、本当に特別なものであることがよくかる名作でした。