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2021年5月24日月曜日

ザ・パシフィック (2010) 1

スティーブン・スピルバーグとトム・ハンクスの二人は、第二次世界大戦のヨーロッパ戦線の戦いを陸軍第101空挺師団の戦いの軌跡を追いかけながらもテレビのミニシリーズとして「バンド・オブ・ブラサース(2001)」を制作し高い評価を受けました。

この作品では、二人が再びタッグを組んで、太平洋戦争をテーマに作り上げました。「バンド・オブ・ブラサース」もテレビ・ドラマとしては破格の1億2千万ドルが使われましたが、本作はさらに上回る2億7千万ドルの制作費を費やしたと言われています。

二人の代表作である「プライベート・ライアン(1998)」が7千万ドルであったことからも、どれだけ金がかかっているかわかるというもの。金をかければ良いというものではありませんが、どちらも戦場の兵士たちのリアルを見事に描いた力作になっています。

原作は、実際に海兵隊員として従軍したユージーン・スレッジ、ロバート・レッキー、ジョン・バジロンの回想録などで、形の上ではこの3人が主人公ですが、「バンド・オブ・ブラサース」と同じく、兵士たち全員が主役として描かれます。

太平洋戦争では、アメリカ軍は主として海兵隊が戦いの主役です。一般に軍隊は陸軍・海軍・空軍から成り立ちますが、海兵隊は海軍の管轄とはなっていますが、実際には独立した第4の軍隊と位置付けられ独自の艦艇や航空機を擁し、その任務地は海外に特化され、国外での戦闘の水陸両用の先兵としての役割を担っています。

1941年12月7日、日本によるハワイの真珠湾奇襲攻撃を受けたアメリカは、ついに第二次世界大戦の中に引きづりこまれます。ハワイは本土から遠く離れていますが、歴史上初めてアメリカ国土を攻撃されたことは、アメリカ人にとって衝撃でした。

日本軍は、以後2か月足らずの間に一気に南下し、フィリピン、グアム、サイパン、パラオ、ニューギニア、ラバウル、そしてソロモン諸島のガダルカナルまで進軍し、オーストラリアも目と鼻の先という状況でした。

日本軍は、アメリカと同盟を結ぶオーストラリアを分断し、太平洋地域の支配権を強固にするため、ガダルカナル島に飛行場を建設していました。1942年8月に始まったガダルカナル島での戦闘は、消耗戦となり日米ともに大きな被害をだしながらも、南太平洋地域での戦果の転換点になった激戦でした。

補給がほとんど無い中で、アメリカ海兵隊にとっては、日本兵の死を恐れない突撃の恐怖だけでなく、悪天候、食糧不足による飢えやマラリアによる発熱・下痢などとも戦わなければなりませんでした。

第1・2話 ガダルカナル

真珠湾奇襲を受けてアメリカでは海兵隊士官が招集され、日本軍撃破の活が入れられます。ロバート・レッキーは近所のヴェラに恋心を抱きながら、海兵隊に志願します。ガダルカナル島に上陸したレッキーらの第1海兵師団は、飛行場を確保したものの、日本海軍の猛攻により沖合に停泊していたアメリカの艦船が撤退したのを目撃します。

補給が無くなり、島に孤立した兵士たちは惨殺された味方兵士の遺体や、自爆する日本兵の現実を突きつけられるのです。一人生き残った日本兵を、少しずつからかうように銃撃する仲間を見て、レッキーは一発で射殺するのです。レッキーはヴェラに「これほど人が残虐になれるのか。自分を許すことができるのか」と苦悩の手紙を綴るのです。

クリスマスが近づくころ、弾薬不足と飢えも加わり、師団の肉体的・精神的な疲労はピークになっていました。執拗な日本軍の爆撃も続きますが、ジョン・バジロン軍曹らの勇敢な行動もあって何とか防衛線を死守しました。消耗の激しい第1海兵師団は、やっと第2海兵師団と陸軍に役目を受け継ぎ、一度後方に退くことになります。

第3話 メルボルン

オーストラリアのメルボルンに到着した第1海兵師団は、オーストラリアを日本軍から守った英雄として市民から大歓迎されます。到着した彼らの宿営地はクリケットのスタジアムでした。観客席に多数の寝具が用意され、彼らは半分野外で寝泊まりすることになります。兵士の休息の目的もありますが、軍の補強・再編成に数か月以上を要しました。

隊員たちは、すぐに町に繰り出して楽しい時間を過ごします。しかし、中には我が物顔のアメリカ兵にいちゃもんをつける者もいました。レッキーは見かけたステラに一目ぼれして、彼女の家で歓迎されます。

バジロンはガダルカナルでの戦いでの功により名誉勲章を授かることになり、英雄として帰国して戦時国債をかき集める仕事をすることになります。レッキーは家族を悲しませられないとステラから別れを告げられ、酔った勢いで上官に暴言を吐き営倉に入れられます。そして、それぞれが次の任務に向かうのです。

第4話 グロスター岬

1943年12月、第1海兵師団は再び上陸作戦を敢行します。今回は、パプアニューギニア島のすぐ東、ニューブリテン島でした。島の東端はラバウルで、日本軍の基地があります。海兵隊は西端のグロスター岬に上陸し、ラバウルを孤立させる作戦でした。

ここでは、毎日降り続く雨が最大の敵。地面はぬかるみ、服も乾く暇がありません。絶望的な毎日が続き、兵士たちは、心をどんどん蝕み、中には拳銃で自殺するものも出ます。レッキーも心の平静を失いつつあり夜尿症を発症します。軍医の計らいで、後方に設置された病院に送られました。

そこには、大勢の心的外傷を発症した兵士たちが収容されています。その中に、レッキーはガダルカナルで一緒に戦ったかつての仲間も見つけるのでした。体調を取り戻したレッキーは、けっきょく仲間のいる戦場に戻っていくのでした。心の回復のためには、戦場に戻ることが必要という兵士たちの現実が見えてきます。