季語は、俳句の17文字に必須の言葉。説明しなくても、季節や情景の一部を既定の共通認識として表現してくれるので、文字の制約が厳しい俳句の中では大変重要な役割を担っています。特殊なものとして、稀に季語を持たない無季俳句と呼ばれるものもあります。
現在、通常「これは季語になる」と誰もが認めている言葉は4,000~6,000語あり、それに似た表現の言葉(傍題)を含めれば15,000~18,000語にも及びます。これだけ膨大な数になると、てんでんばらばらでは歳時記で探すのも一苦労。
そこで、季語はその内容によってある程度時期が分類がされています。まず、季節。春、夏、秋、冬、そして1月だけは新年として独立しています。それぞれの季節は、初・仲・晩で3つに分割され、共通して使える物は三春・三夏・三秋・三冬とされています。
これは旧暦の二十四節気と密接に連携していて、初春は「立春」と「雨水」、仲春は「啓蟄」と「春分」、晩春は「清明」と「穀雨」、初夏は「立夏」と「小満」、仲夏は「芒種」と「夏至」、晩夏は「小暑」と「大暑」、初秋は「立秋」と「処暑」、仲秋は「白露」と「秋分」、晩秋は「寒露」と「霜降」、初冬は「立冬」と「小雪」、仲冬は「大雪」と「冬至」、晩冬は「小寒」と「大寒」です。
また、その内容によっても分類されます。「時候」、「天文」、「地理」、「人事(生活)」、「動物」、「植物」、そして「行事」の8項目があります。
例えば「春」の場合は、三春の時候の季語。「二月」は初春の時候の季語になります。「朧月夜」は三春の時候、「八十八夜」は晩春の時候、「雪崩」や「雪解」は仲春の地理という具合です。
旧暦と今の暦とでは、1か月くらいのずれがあるので、夏だったら8月7日に立秋で秋になりましたと言われても、まだまだ暑くてとても秋とは思えません。立秋以後にすぐ秋の季語を使うのは現実とのギャップを感じますが、これは俳句の世界のルール。
また、晩夏に初秋の季語を使うこと(季節の先取り)はかまわないことになっています。ただし、初秋になったのに、まだまだ暑いからと晩夏の季語を使う(季節の後戻り)のは原則としてOUTです。
「七夕(たなばた)」というと、7月7日で夏と思いがちですが、季語としては初秋の行事にあたります。陰暦の7月7日に行われた行事で、実は本来は今の8月7日のことで、夏と秋が交差する祭りです。
七夕や互いに呼びし天河原(あまがわら)
まぁ、相当な凡人句です。七夕と言えば琴座のα星ベガ(織姫)と鷲座のアルタイル(牽牛)が、年に一度天の川をはさんで大接近することになっていますが、伝説と違って両者の星はけっして重なるわけではありません。向こうの河原とこっちの河原で、言葉を掛け合うのが精一杯できること。一年ぶりでどんな話をするのか、まぁ、地上にいる自分たちには知ったこっちゃありませんけどね。