季題「鰯雲」で、俳句を作る。いや、難しい。もっとも、何を兼題に出されても、難しいのは一緒ですけどね。
鰯雲・・・秋です。秋と言えば芸術。俳人の中には、西洋絵画に興味を持っている方もいますが、代表的なのが阿波野青畝(あわのせいほ)という人。
ルノアルの女に毛糸編ませたし 阿波野青畝
「ルノアル」はルノワールのこと
モジリアニの女の顔の案山子かな 阿波野青畝
いや、もう、傑作です。 これにならって、自分の好きな印象派の点描が特徴のスーラを題材にしてみました。
鰯雲一色キャンバススーラかな
空と言う広大なキャンバスにスーラが白一色で点描したのが鰯雲・・・という感じなんですが、何か言い足りない雰囲気。着想としては面白いと思いますが、このままだと凡人句はまぬがれない。青地に白絵具一色というところまで流し込むには、17文字では足りそうもありません。思い切って整理してしまいましょう。
鰯雲白一色のスーラかな
そういえば、9月19日が命日の正岡子規を使わせてもらうのもありですね。俳句の世界では、有名な文化人の命日は忌日として季語扱いになっています。子規の場合は、「子規忌」、あるいは「糸瓜忌」、「獺祭忌」が季語になっています。
ただし、それらを使うと「鰯雲」と季重なりになってしまい、季語の強さは忌日が主になってしまう。子規はホトトギスの別名で、ホトトギスは秋になると日本から離れていきます。ホトトギスは他にも、比較的珍しい呼び名として不如帰があります。鳥の名前として使うと、どれをとっても季語になってしまいますが、これなら多少季語としての力は弱められそうです。
不如帰終に望むや鰯雲
正岡子規は、亡くなる間際には鰯雲を見ることがあっただろうか。子規は「鰯雲」を使った句は作っていません。そしててホトトギスも日本を離れる前に見れたかなぁ、という二重の意味が含めることができたと思います。
この句の是非は「不如帰」と「鰯雲」の季重なりです!! あー、何か声が聞こえてきそう。とりあえず最終候補として残しておきたいと思います。