基本として17文字しか使わない俳句の組み立て方には、2つのパターンがあります。それが「一物仕立て」と「取り合わせ」です。
「一物仕立て」は、一つの季語(題材)に対して句を詠むこと。「取り合わせ」は、季語とそれとは別の題材について詠むこと。教科書的に説明するとそんな感じになりますが、ちょっと理解しにくい。
実際の例句で確かめましょう。
白牡丹といふといへども紅ほのか 高濱虚子
季語は白牡丹。白色というけどよく見れば紅色がわずかに混ざっている、という内容です。まさに一物仕立てで、季語の内容だけについて語っています。
春雷や女ばかりの雛の宿 高濱虚子
こちらは、季語は春雷ですが、助詞の「や」で切って場面を屋外から屋内に変え、中七・下五に展開を作っているので取り合わせです。
しかし、なかなかクリアカットにどっちと断定しにくい俳句もみかけます。それは、途中に明確な切れがあるため取り合わせのように見える一物仕立てと、切れが明示されていないために一物仕立てのように見える取り合わせがあるから。このあたりは、たくさんの句を鑑賞して、感覚を身につけていくしかないようです。
例えば、これはどうでしょうか。
遠山に日の当りたる枯野かな 高浜虚子
正解は取り合わせ。遠い山に日が当たることと、枯野が広がっているという2つの題材を詠んでいます。ところが、日が当たるのは枯野とも鑑賞できてしまうため混乱します。しかし、冷静に考えると遠い山と季語である枯野はまったく別物とわかります。
一物仕立てだろうと取り合わせだろうと、どっちでも良さそうに思いがちですが、そこを見抜けないと作者の言わんとすることが理解できずに間違った鑑賞をしてしまうので、ちゃんと勉強しておかないといけないということです。