2023年3月20日月曜日

John E.Gardiner / Purcell MUsic for the Funeral of Queen Mary (1976)

ドーバー海峡を渡ってイギリスに行くと、ヨーロッパ大陸とは地続きではないので、フランスやドイツとは一味違うような雰囲気の音楽が発達しました・・・かどうかは詳しくないのでよくわかりませんが、何しろ中世ではアーサー王と円卓の騎士が有名な騎士道の国、今でも紳士の国として、先進国の中では今でも王政を維持している。


バロック時代の音楽というと、ほぼイギリス人の作曲家はヘンリー・パーセル(1659-1695)の一択という状況です。ただし、J.S.バッハ最大のライバルであるドイツ人のヘンデルは、イギリスに帰化していて、一応パーセル亡き後のイギリス・バロックを盛り上げました。何しろ「ハレルヤ・コーラス」で有名なヘンデルの「メサイア」は歌詞が英語です。

パーセルが活躍したのは、時代的にはバロック中期、時の王はチャールスII世。18歳で王室楽団の指揮者に抜擢されました。36歳の若さで亡くなりましたが、多くの歌劇、あるいは劇不随音楽を作りました。

最も有名なのは「ディドとアエネアス」で、他に「アーサー王」、「妖精の女王」、「テンペスト」、「インドの女王」などがあり、さすがはイギリス人のジョン・エリオット・ガーディナーが、これらを録音しているので、ガーディナー好きにはお馴染みです。

他にも、アンセム(宗教的な賛歌)もいくつかありますが、器楽曲はほとんどないので、声楽が苦手の向きにはちょっと辛いかもしれません。自分も、ガーディナーの演奏を聞いていなければたぶん見向きもしなかったと思います。

チャールズII世が1685年に退位し、次はジェームズ7世が王になりますが、1688年で名誉革命で追放されると、王位に就いたのがメアリーII世女王でした。

そのメアリー女王は、1694年に天然痘で亡くなります。この女王の葬儀のためにパーセルが作ったアンセムがあります。

まさに葬送の曲と言わんばかりの、女王を失った悲しみを目一杯表現しているわけですが、ガーディナーが鍛え上げた、手兵のモンテヴェルディ合唱団の一点の淀みも無い合唱が素晴らしい。

最もさすがに明るいところはありませんので、これだけだと気持ちが沈み込んでしまいますので、カップリングの威勢の良い「来たれ、汝ら芸術の子よ」と合わせて楽しみましょう。