2023年3月25日土曜日

Jordi Savall / La Folia (1998)

スペイン、ポルトガルのイベリア半島は、中世までは植民地を拡大して国の勢いがあり、キリスト教音楽が盛んで西洋音楽の聖地にもなっていました。ヴィオールの名手、ジョルディ・サバールはスペイン出身。地元のバロック音楽事情はどうなんでしょうか。


世界史の教科書を開くと、ハプスブルグ家の支配下にあったスペインに対して、1635年にライバルのフランスが宣戦布告しフランス・スペイン戦争がはじまります。両国の消耗により1659年に戦争は終結しますが、当然国土は疲弊してもう音楽を楽しむどころではありません。

そんなわけで、スペインはバロック期には際立った活躍をした音楽家があまりいない。まぁ、いるのはいるんでしょうけど、そこをほじくるのはあまりにマニアック。音楽学者としても多くの成果をだしているサバールも、さすがにあまりスペインのバロック期についてはあまり録音がありません。

そこで、紹介するのはフォリア(folia)です。

フォリアは、15世紀末頃にイベリア半島で生まれた三拍子の舞曲。もともとは「狂気」という意味だったらしく、焚火を取り囲んで酒を酌み交わしながら歌い踊った人々が想像できます。17世紀には音楽先進国だったイタリアでも広まり、多くの作曲家が作品の中に取り込んだりしているうちに、精錬された音楽様式になったようです。

サバールは、たひだひフォリアを題材としたアルバムを作っています。このアルバムでは1490年から1701年までに作られた、作曲者不詳のものも含めて8曲が治められています。ヴィオールの素朴な響きに、時にギターやクラブサンが華を添え、そして打楽器が加わります。打楽器ではカスタネットらしき音が、いい感じにスペインらしさを醸し出しています。

同様の趣向は2005年の「Altre Follie」でも聞くことができます。いわゆるバロック音楽とは一線を画するものですが、音を楽しむのが音楽ですから人々の心にしっかり染み込む雰囲気は一聴の価値ありです。