2023年3月21日火曜日

Jordi Savall / Marin Marais Pieces de Viole (1975-92)

ジョルディ・サヴァールは、1941年生まれのスペイン、バルセロナ出身。キャリアの初めからヴィオラ・ダ・ガンバを学び、1974年に古楽器グループであるエスペリオンを結成し頭角を現しました。1987年には合唱団であるラ・カペイラ・リイアル、さらに1989年に大規模なオーケストラであるコンセール・デ・ナシオンを設立し、中世、ルネッサンス、バロック、古典と幅広い時代をカバーする活躍をしています。

そもそもサヴァールは、ガンバニストなので、ヴィオラ・ダ・ガンバの演奏もたくさん録音しており、現代ヴィオール奏者のトップクラスの巨人と位置付けられます・・・って、そもそもヴィオラ・ダ・ガンバって何? という感じです。

ヴィオラ・ダ・ガンバはイタリア語、ウィオールはフランス語。ガンバは脚という意味で、足で支える弦楽器です。大小さまざまなものがあるので、これらをまとめてヴィオール属と呼ぶことがあります。ヴィオラ・ダ・ブラッチョは腕で支える弦楽器で、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロを含むヴァイオリン属のこと。

音量の小さいヴィオール属は古典期以後急速に使われなくなりましたが、70年代以降の古楽復興が盛んになるにつれ復活し、現在では古楽の演奏には無くてはならない重要な楽器の一つとされています。

バロック期に、最も有名だったガンバニスト(ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者)は、たぶんフランスのマラン・マレー(1656-1728)です。ルイ14世の宮廷で演奏し、作曲家としても活躍しました。

マレーの代表作品は、1686年から1725年にかけて発表された全5巻からなるヴィオール曲集です。サヴァールは、まだ楽器がほとんど知られていない70年代から、これらを全曲録音しており、ヴィオールを世に知らしめる記念碑的な偉業となっています。

基本的にはクラヴサン(チェンバロ)かテオルボ(リュート、ギターのような楽器)とのソナタですが、曲によってはいろいろな組み合わせになっていて、聞き続けていても雰囲気がいろいろと変化するので飽きません。クラブサン演奏は、学者肌のトン・コープマンですから、サヴァールととことん議論を重ねて、虚飾を廃してマレーの時代を正確に表現したものと思います。