何となくイタリアならヴィヴァルディ、ドイツならJ.S.バッハの音楽がバロック・・・くらいにしか考えていませんでしたが、実はこのあたりはバロック音楽という時代区分で言えば末期。
16世紀のルネッサンス音楽から、バロック音楽と呼び方が変わるのは17世紀初頭の劇音楽の登場(劇音楽は今で言うオペラ)。J.S.バッハの死(1750年)と共に終焉し、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンらが活躍する古典派音楽の時代に移ります。
初期バロックはキリスト教カトリックの総本山があるイタリアが中心で、特にもヴェネチアは音楽形式熟成の拠点でした。現在、その中で最も重視される作曲家の一人がクラウディオ・モンテヴェルディです。
1567年に生まれたモンテヴェルディは、マントヴァの宮廷楽長として仕え、膨大なマドリガーレを作曲しました。これは、感情表現を取り入れた無伴奏か、数人規模の伴奏を伴う歌曲で、今で言うポップスみたいなもの。また1607年には自身最初のオペラである「オルフェオ」を世に送り出しています。
一方で、宗教曲も積極的に作曲していて、この「聖母マリアの夕べの祈り」は最も有名で、バロック音楽を演奏する集団、特に古楽系の楽団で録音を残していないところを見つけるのが難しいくらい必須の曲になっています。
カトリック教会での聖務日課の一部である晩課が元になっていて、独唱と合唱、当時としては大人数の器楽演奏者を必要とする大規模な物で、時間も90分程度かかります。実際の教会の中では、すべてを演奏するのは大変なので、必要に応じて部分的に演奏されたと考えられています。
ジョン・エリオット・ガーディナーは、ケンブリッジ大学在学中の1964年にモンテヴェルディの名を冠した合唱団を結成しました。これは、まさに「聖母マリアの夕べの祈り」を歌いたいがためといわれています。
ガーディナーの目標は10年後に実現し、今もCDが発売されていますが、何と言ってもこの曲の名盤とされのは合唱団結成25周年として行われた1989年の録音で、ビデオも作られています。
個人的には、数年前に新たに演奏された盤が、音質・画質とも最高で、全体的に円熟の味わいを感じられるので気に入っています。