2023年3月19日日曜日

Jordi Savall / Rameau Suites d'Orchestre (2011)

フランス・バロックでおさえておきたい作曲家は、まずバロック中期のジャン=バティスト・リュリ(1632-1687)です。もともとイタリア人なんですが、ルイ14世の大のお気に入りとなり、宮廷音楽家として栄華を極めたらしい。遺されている作品は、ほとんどは歌劇的な物です。最後は自らのドジで怪我をして急死しました。

次に思い出すのは、フランソワ・クープラン(1668-1733)です。教会のアルガン奏者として実績を積んだクープランは、王宮にも出入りするようになり専属のクラブサン(チェンバロ)奏者になります。一部の器楽曲、宗教曲を除くと、作曲した大多数は200曲以上あるクラブサン用の曲集です。今、手に入るクラブサン曲全集はCDで1o枚を要する物になっています。

バロック後期の代表的な作曲家がジャン=フィリップ・ラモー(1683-1764)です。ラモーも教会オルガン奏者として名を上げた後、オペラ作曲家として人気を得ました。しだいにルイ15世にとり立てられ、王室付となります。多くの作品はオペラですが、いくつかのクラブサン曲集を通して、音楽理論の体系化も行っていました。今日用いられる和音を意味する「ハーモニー」はラモーの著書から生まれたものです。

フランス・バロックの作曲家が、特にオペラに力を入れていたことから、オペラ苦手の自分としては当然敬遠しがちになってしまうわけですが、ラモーの場合は自らのオペラの曲を管弦楽用の組曲としてまとめ直したものがたくさんあるのが助かる。

おそらく、それらを一番録音に残したのはフランス・ブリュッヘンです。ブリュッヘンはリコーダー奏者として有名になった後に、自らの古楽楽団を組織しバロックから古典にかけてたくさんの業績を残しました。

ただし、ここではあえてスペイン出身のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者、ジョルディ・サバールの演奏を取り上げます。サバールも自らの古楽器オーケストラを組織していて、特にルネッサンス期にまで遡る徹底した古楽追及は他の追従を許しません。

例えばJ.S.バッハの曲の演奏でも、同じ古楽系でもガーディナーのものとはまったく異なる表現をするので興味深い。うまい言葉がなかなか思いつかないのですが、古色蒼然としたひなびた音という感じで、作曲家が生きていた時代のリアルタイムの音楽は確かにこんな感じだったのかもしれないと強く共感できる。

ここでは、CD2枚に歌劇「優雅なインドの国々」組曲、歌劇「ナイス(ナイアス)」組曲、歌劇「ゾロアストル(ゾロアスター)」組曲、歌劇「ボレアド」組曲の4つが演奏されていて、歌劇本編を知っている人ならエッセンスを抽出したようなところかせさらに楽しめのではないでしょうか。